血のニオイを嗅ぎ分ける獣 四 ページ9
「あはは、Aカワイー」
神威がケラケラと笑う前で、沖田は顔に影を差して口を閉ざしていた。
Aは彼の様子を見て不安になって
「そ、総悟……?」
「Aさん……アイツ斬りまさァ」
「え!?ちょっ、総悟落ちつい」
Aが止める前に、沖田は踏み込んで神威に斬り掛かった。
神威は軽々と刀を避け、ニコニコ笑っていた。
「怖いねェ〜。本気で殺されちゃいそうだから、今日はこれで帰るとするヨ。じゃあね、A」
手を振ってAの名を呼び、阿伏兎と共に逃げていった。
「チッ、逃すか!!」
「ま、待って総悟!」
沖田が追おうとしてAは慌てて腕を掴んだ。
「……」
掴まれて追えず、沖田は仕方なく刀を鞘に収めた。
しかしすぐに振り返りAの手首を掴んで、ダンッと壁に追いやった
「ッ!?そ、総悟……?」
Aは驚いて沖田を見やるが、彼は静かに怒っている様子だった
「ーーで?アイツには告白とかされたんですかィ?」
「えっ?」
いきなり想定してないことを聞かれてAは驚く
「あー……いや。告白はされてない、と思う」
「何ですかィ、その不確かな返答は」
「うーん。吉原の騒動の時に、『力の面では』確実に神威君から気に入られたっぽいんだけど……恋愛的な告白はされてなかったよ」
「……なるほどねェ」
Aは、神威が自分に恋愛感情を持っているとは思っていない
しかし
(あの様子、絶対Aに惚れてんだろ)
沖田は察して苛立たしげに眉を寄せた
「……あの。ごめん、ね」
「?なんで謝るんですかィ」
「いや、だって……総悟からしてみれば、告白した好きな人が別の人にキスされちゃった状況な、わけだし……」
Aの言葉を聞いて沖田は驚いて目を見開いた
「……鈍感なアンタでも分かるもんなんですね」
「ちょ、ちょっと酷いっ!好きな人が目の前でそんなことされたら悲しくなるのは分かるもん!」
「……Aさん。大筋は合ってますが一つ間違ってることがありまさァ」
「え?」
「俺は目の前で惚れた女が他の男にキスされても、悲しくなんざなりやせんよ。ただ……」
――相手を殺したくなるだけでさァ
彼の目は、大量の殺気を放って鋭く光っていた
まるで殺人鬼のような目にAは心奥から、本能の赴くままに恐怖があふれてくる
「ま、またまたァ……」
相手の雰囲気を見れば冗談でないことくらいは分かる
しかしAは笑って流すことしかできなかった
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月5日 12時