血のニオイを嗅ぎ分ける獣 二 ページ7
「ひゃっ！？ちょ、ちょっと神威く……」
Aは突然抱きつかれて驚くが、あるニオイがして言葉が止まり顔を強張らせた
「……血の、ニオイ」
その呟きに神威と阿伏兎がピクリと反応する
しかし神威は相変わらずニコニコしたままで
「あはっ、Aだから気づくか」
「……もしかしてそこで見つかった血痕って」
Aの声が低くなり、阿伏兎と神威を引き剥がそうと彼女の手が動く
しかし
『！！』
ズガァンと刀が勢いよく飛んできて、神威と阿伏兎はすぐさま後ろに飛び退いた
刀はAの横スレスレを通り抜けて壁に突き刺さる
衝撃が壁に大きなヒビを作っていた
「お役人サンって皆怖いねェ〜……Aに当たったらどうするのサ」
神威はニコニコしていたがその声には怒気が含まれていて、刀の飛んできた方へ目を向けた
そこから、真選組の隊服を着た栗色の髪の少年――沖田が歩いてくる
「心配いらねェ。俺はコントロールは良い方なんで、Aには傷一つ付けずに……虫を叩き潰してやらァ」
沖田の顔には影が差し、その目には殺意と嫉妬がひしめき合っていた。
「ひゃー怖いねー。にしても、Aは相変わらず片っ端から男をオトしてるんだネ」
「へ、変な言い方しないでよっ」
Aは神威にいじられて恥ずかしさと照れで顔を赤くする。
沖田はAのそばまで行き、壁に刺さった刀を引っこ抜いて構えた。
「さっきそこに、Aを襲った女の死体があった。アレはてめーらの仕業かィ」
「！！」
沖田の言葉にAは目を見開く
彼女が驚いている前で、沖田は鋭く神威たちを睨みつけた
「……さーね。俺たちは春雨の一部が変な動きをしてたから来ただけだよ。なんでも春雨と手を組んだ女が裏切ったみたいじゃないか。そんな勇気があるなんて凄いネ」
まあ馬鹿の勇気だけど、と神威はニコニコ笑って付け足した
神威の横で、阿伏兎は話を合わせる
「その女は襲撃事件を起こして、あろうことか春雨を見捨てて逃げたんだってェ？それで死んでるんなら、春雨に報復されたんだろ」
「ま。信じるか信じねーかはアンタら次第だが」
阿伏兎はAと目が合って、彼女はジッと見つめる
(さて……どういう返答をするのか)
阿伏兎がAの返答に淡い期待をし、Aはうつむいて口を開いた
「……うん。信じるよ」
Aは顔を上げ阿伏兎と神威の目を見て
「だって二人の目、真っ直ぐだから」
ニコッと笑った
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作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2023年5月5日 12時
