血のニオイを嗅ぎ分ける獣 一 ページ6
襲撃事件の後、Aは山崎と共に、沖田とは別行動で女の捜索を行なっていた。
沖田が合流してきたが、その顔にはどこか険が見える。
「何かあった?」
「……はい。さっき住民から向こうの方で血痕があったって聞いたんで、ちょいと見てきます。Aさんは山崎とここにいてください」
「え。あ、ちょっと総悟!」
沖田は報告するだけして走っていってしまい、Aは山崎と共に路上で立ち尽くす。
「どうします?隊長を追いますか?」
「ええ。血痕があるってことは危険な人がいるかもしれません。そこに一人で行くのは危ないです」
Aは山崎に背を向けながら考えていたが
「山崎さん、行きま……」
指示を出そうとした瞬間、後ろでドサッと音がして山崎が地面に倒れた。
「!!」
Aはすぐさま刀の柄を掴んで抜刀し、振り返らずに相手の喉元に的確に切先を突きつけた。
その動きは一秒もなく、後ろにいる人物は片手を挙げて「ヒュー」と口笛を吹いた。
もう片方の手には番傘を持っていて
「いやァ、凄いね今の抜刀。全然見えなかったよ」
「……その声、神威君」
「あと阿伏兎もいるよ」
神威がニコッと笑っていうと
「!あぐっ……!」
死角から腕を掴まれ、強く握られてAは痛みで刀を離してしまった。
「わりーな」
Aに影が差し、見上げれば阿伏兎が少し申し訳なさそうにしていた。
(嘘……気配に気づかなかった……)
Aは神威に気を取られて阿伏兎を察知できなかったようで動揺してしまう
「安心してよ。Aが気づけなかったんじゃない、俺たちが気づかせないようにしてただけだから」
神威はニコニコと笑っていた
「それって、私が貴方たちには劣るってことですよね。悔しい事には変わりないん、ですけど」
Aは眉を寄せながら言う
もちろん腕を捻って阿伏兎から離れることはできるが、無理に動くと自分の骨が折れてしまう
(すぐ回復するから良いかなって思ったけど……)
Aが腕を捻ろうとすれば、それを妨害するように阿伏兎が同じ方向に微妙に動いてくる
(阿伏兎さん……私の行動を読んで妨害してきてる)
「
「……厄介極まりないですねそれ」
抜け出す策を潰されてAは苦い顔をする
そんな彼女に
「久しぶりに会えたのにつれないなァAは」
神威はガバッと後ろから抱きついた
血のニオイを嗅ぎ分ける獣 二→←兎は餌場を荒らされるのを嫌う 三 終
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月5日 12時