しょせん星は天に鎖を引かれる飼い犬である 五 終 ページ15
「クク……安心しろ。今すぐには手を出さぬ」
しかし、と天導衆は言葉を続けてAの耳元で囁いた。
「やはりお主から――アルタナの気配がするな」
「ッ!!!」
ドクン、と大きく心臓が跳ね上がった。
Aは目を見開き、心臓の音が絶えず大きく鳴り響く。
(否定……しなきゃ)
(離れ、なきゃ……)
(突き放さなきゃ、いけない、のに……)
彼女が脳にいくら指令を出しても、体は固まったまま反応せず立ち尽くす。
「どうした。やはり何か隠しているのか?」
「ァ……」
嘘をつけば、おそらく見破られてしまう。
その上、不安と恐怖で完璧に嘘をつくことなど不可能だった
「話さないのであれば無理矢理にでも――」
「そろそろ時間ですよ。彼女をいじめるのはそれくらいにしてはいかがですか」
目の前の男が話していると、誰かが割って入ってきた
話に割り込んできたのは天導衆の一人であり、唯一まだ柱から降りていない人物だった
「え……」
Aはまさか止めてくれる人物がいるなど思っていず驚いてその人を見る
彼は柱から降りてきて、Aたちの元に歩いてくる
その男は黒い烏の仮面と笠を被っていて顔が分からない
天導衆の男は仮面の彼を見て「フン」と鼻を鳴らしてAから離れた
「……まあ今日のところはここまでにしておいてやろう。だがAよ、一つ覚えておくといい」
「しょせんお主は、我々に鎖を引かれるただの飼い犬だ。どこにも逃げ道はないと知れ」
「ッ……」
周りの天導衆たちがAを離し、彼女は地面にへたり込む
Aの首には、見えない首輪がはめられていた
それに繋がれる鎖は、天導衆の天人たちの手に収まっている
彼女が天導衆から逃れることなどできないと証明するもの
天導衆たちは、先ほどの仮面の男を残して全員部屋をさっていった
「こうして話すのは初めてですかね」
仮面の男がAの前まで来て彼女を見下ろす
Aも見上げてジッと目を見つめた
「あ、の……どうして、助けてくださったん、ですか」
彼女の言葉に男は少し黙った
「……助けたつもりはありませんよ。ただ貴方が、見ていられなかっただけのことです」
(不思議……なんだかずいぶん昔に、会ったことがあるような気がする)
Aは目の前の人物に、なぜか懐かしさを感じていた。
「あの……私たち、どこかで」
彼女の言葉を遮るように
男は しゃがんでAの額に口づけを落とした
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月5日 12時