しょせん星は天に鎖を引かれる飼い犬である 三 ページ13
(クソ、コイツらぶん殴りてェ……)
戦は天導衆たちが腹立たしく思えてくるが、今ここで暴れるわけにもいかず拳を握って堪えた
「悪いが、俺は忠義なんざAにしか向けるつもりないんで」
「ちょ、お兄ちゃ」
「よいよい。端からそやつの忠義なぞ期待しておらん」
「なんと言っても、役人を殺そうとするような輩なんだからなァ」
『!!』
天導衆の言葉にAと戦は目を見開いた
《それが本題か……》
二人とも天導衆たちの意図を察して途端に緊張が駆け巡った
Aだけでなく戦も呼び出したのは、例の役人襲撃の事を問いただすためであろう
「お騒がせしてしまい申し訳ございません。今回の件は兄が私を護ろうとして起きてしまったことです。天導衆の皆様のお手を煩わせるようなことは何もございません」
Aが硬い表情で陳謝するが、天導衆たちは特に叱責する様子はなくむしろ笑っていた
「クク……あそこまでの事件になるほど、お主を求めている輩がいるとは。やはりお主、力とその容姿以外にーー何か特別な物でも持っているのではないか?」
『ッ!!』
天導衆たちの目が鋭く射抜いてきてAと戦は声が出てこなくなった
天導衆の今回の目的は戦の蛮行を咎めるよりも、Aが狙われた事について探りを入れる事だったのである
(まさか、コイツらAを星人だと疑ってるんじゃ……)
Aの力や特性を見ていれば、おのずと「星人」という選択肢が出てくるのも無理はない
真実は教えてはいけない
教えるわけにいかない
しかし、沈黙は長ければ長いほど違和感を生み、疑う余地がつくられてしまう
《どう切り替えす。黙るのは最悪手だ。しかし発言した途端に天導衆たちが言葉を突っ込んでくるだろうから、不確実な嘘やヘタなことは言えない》
Aと戦は必死に脳を回転させて天導衆達への返答を考える
(答え方次第では……こちらが『落とされる』)
この場に置いて言葉は己の武器にも、相手への餌にもなる。
言葉によって、自分を護れるのは自分だけ
言葉次第で、自分を滅ぼすのも自分だった
「どうした。二人でそんな顔を青くして」
『ッ……』
「アンタらも、分かってんだろ」
戦が言葉を発した
「Aは……女も男も落とす魔性の容姿を持ってるってことをよォ」
冷や汗を流し、強がって口角を引き上げる
「……それで春雨を引き連れてまで騒いだと、お主はそういうのか」
天導衆の目が鋭く戦を捕らえた
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月5日 12時