家族は彼女だけでいい 四 ページ6
「だがまあ、アイツが行ってるのはAの親の墓参りだ。自分の親の墓参りじゃねーよ。アイツは親の墓作ってねーし」
「え……何でですか?」
新八が台所から居間にやって来て、銀時はジャンプを閉じて机に置いた。
「アイツは……」
ーー
「あ、おかえりなさい戦さん」
真選組屯所にて、外から帰って来た戦に山崎が声をかけた。
「おう。まだ会議は始まってねーよな」
「あ、はい。隊士たちが父の日の用事で何人かまだ帰っていないので。始まるのは十九時くらいになるかと」
戦が山崎と共に部屋に行けば、中には沖田と土方がいた。
「あ、戦さんも父の日の帰りですかィ?」
「あー……まあ、そんなところだ」
沖田に問われた戦は視線を上にあげ、頭を掻いて答える。
山崎は戦の親の話になって、以前ミツバの件の際のことを思い出した。
『家族を失った兄妹ってのは皆、意地張っちまうもんだぜ』
戦は、両親を失って姉しか家族のいなくなった沖田に自分を重ねていた。
『……もしかして戦さんの両親も』
その時、山崎は少し言いにくそうに尋ねたが
『俺の家系に、んなしんみりした思い出はねーよ。深読みしすぎだジミー』
戦はそう言って流していたが、近藤は硬い表情をしていて
『ああ言ってはいるが……アイツの家族は今、桜さんだけだ』
『え。じゃあやっぱり亡くなったんですか……?』
山崎が少し申し訳なさそうにしていると、近藤は「違う」と否定した
『アレは、もっと重いモンだ……』
『ま、詳しい話は本人から聞くんだな。俺から話すのは、ちと勝手がすぎる。話してもアイツは怒らんだろうが、俺の気持ちの方がもたねーわ』
近藤は少し辛そうに、苦笑いしていた。
ちょうど親の話になった今なら、彼から本当のことを聞けるかもしれない。
「……あの」
山崎は顔を上げて、戦に声をかける。
「戦さんの、ご両親って……」
怒られるだろうかと額に汗を浮かべていたが、戦はフッと笑った。
「いねーよ。もう死んだ」
『……』
戦は笑っていたが、その顔には哀が潜んでいることに山崎や土方、沖田は気づいていた。
「……す、すみません。嫌なこと聞いて……」
「気にすんな。別に聞かれたくねーわけでもねェしな」
「俺の両親はなーー」
戦は普段と変わらぬ様子で
「俺が殺したんだよ」
『!!』
三人が見る戦の目には、悲しみなど何一つなかった
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» コメントありがとうございます!ここまで読んでいただきオリキャラも慕っていただきありがとうございます! (5月5日 12時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - いつもありがとうございます。夢主ちゃんも勿論大好きなのですが、ぶっきらぼうでちょっと怖いけど本当は優しいお兄ちゃんも大好きなので、彼の話を心待ちにしておりました。 暑くなってきましたので体調に気をつけてお過ごしください。 (2023年5月3日 12時) (レス) @page39 id: e6fe50ece6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年4月21日 21時