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家族だって知らないものの一つや二つはある 四 終 ページ39

「な、なに笑って……」
「ごめんね。嬉しくてつい」
「う、嬉しい?」
「だって私……お兄ちゃんが泣くところ、初めて見た」
「!」

 戦は、あまり人前で泣かない男である。

 親を殺した時も、松陽が面会に来た時も、銀時たちが牢屋に駆けつけてきた時も

 戦は涙の一つも見せてこなかった。

 そして今も、彼は一人で抱え込み誰にも何も言わずに歩いている。

 幼馴染(とも)にも真選組(なかま)にも(おもいびと)にも

 涙どころか、弱さすら見せない。

 彼は自分の本当の心をずっと隠して生きていた。

「『お兄ちゃん』がひた隠しにしてきた気持ちを、知ることができた」

「『戦君』をもっと知ることができた」

 Aは今の今まで、戦を知らなかった。

 彼女が知っていたのは一部だけで、ようやく真に、彼に触れられた気がした。

「私、いま初めて……君に見てもらえた気がするよ『戦』」

 兄から、戦君から、戦へと

 彼女の思いは徐々に強くなっていく。

 それは無意識の変化。

 彼女も気付かぬうちに

 家族という呪いを、兄という鎖を砕いて

(A、俺のことを……)

 一人の人間として彼を見始めていた。

「護ってくれて、ありがとう」

「そばにいてくれて、ありがとう」

「私の手を握ってくれて、ありがとう」


「ねえ、戦」

「私にも、そばにいさせて」

「私にも、手を握らせて」

「私にも……大事な君を、護らせてよ」

 Aは戦に手を伸ばした

 そこに妨害する壁はなく

 戦の中の扉はこじ開けられて、眩しい光で薄暗い心奥を照らされる

(嗚呼……ホントこいつは……)

 戦は眩しすぎるその光に眉を下げ、昔誰かに言われたことを思い出した。

『何でお前、そんなに妹のこと好きなんだよ』

 AAを慕うものの理由は、ほとんどが顔や性格の良さであるが

 戦はそれ以上に

(俺ァ、この眩しい光が大好きなんだ……)

(眩しくて、敵わねェ)

(どんだけ善い光になろうと模範しても、それに近づくことすらできねェ)

(俺ァ……こいつみたいになりてェ)

 彼は彼女に、人として憧れてもいた

(親を殺したとき、この光があったから俺は歩いていけた)

(この光があったから、俺は前に進めた)

(次は俺も、誰かの光になれたら、コイツの光になれたらって、そう思ってたのに……)

「アンタにゃ……敵わないな」

(救われるのは、また俺の方だ)

 眩しい光を受け入れて、戦はAの手を取った

こびりついて離れない悪夢→←家族だって知らないものの一つや二つはある 三



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設定タグ:銀魂 , 逆ハー , 愛され   
作品ジャンル:アニメ
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» コメントありがとうございます!ここまで読んでいただきオリキャラも慕っていただきありがとうございます! (5月5日 12時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - いつもありがとうございます。夢主ちゃんも勿論大好きなのですが、ぶっきらぼうでちょっと怖いけど本当は優しいお兄ちゃんも大好きなので、彼の話を心待ちにしておりました。 暑くなってきましたので体調に気をつけてお過ごしください。 (2023年5月3日 12時) (レス) @page39 id: e6fe50ece6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年4月21日 21時

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