親が思うほど子は馬鹿ではない 六 ページ14
戦たちだけでなく、Aも戦が持っていた鉄管を使って敵を気絶させていく。
しかし
『侵入者ってどういうこと!』
『それがどこかから男が入ってきて、それにガキも!』
遠くの方から天人の声と、聞き慣れた戦の両親の声が耳に入ってくる。
『ッ!』
その声が聞こえた瞬間、Aは固まってしまった。
『A?どうした』
戦はすぐに彼女の異変に気づき、Aに襲いかかる天人たちを木刀で薙ぎ飛ばす。
Aの前で彼女を護るように立ちながら様子を伺った。
『く、る……戦、くんの……お父さんと、お母さんが……』
『!』
Aは不安と恐怖で瞳孔が開く。
途切れ途切れに出された彼女の言葉に戦は驚いた。
その一言で、戦には彼女の心境の変化がすぐに分かった。
今のAは、彼の両親を
家族として見ていないということを。
これまで彼女は、戦の両親のことを自分の親の如く「お父さん」「お母さん」と呼んでいたが
今は「戦の父親と母親」という他人行儀な呼び方をした。
裏切られたことが分かったからか、恐怖や不安があるからか、そのどちらもか
『A……』
廊下から戦の両親の声が聞こえる度にAは体を震わせ、うずくまってしまった
松陽はその様子を見て少し何か考えて
『戦、A。この人数相手ではラチが開かない。この通気口から船の外へ出て海を泳ぎましょう』
松陽は天人たちを薙ぎ倒しながら、壁沿いの通気口を指す
その通気口を抜ければ船の外、海へと出る。
『ま、マジかよ』
戦は松陽の指示を聞いて顔を引きつらせた。
『大丈夫、岸まではそれほど離れていません。子供でも泳げる距離です。幸い夜でも今の海は少し温かいくらいですから』
この船は次の船着場までかなり近い距離まで来ている。
船から出て海を泳ぎ、船着場から少しズレた岸に上がってすぐに逃げれば彼らに捕まらずに済む可能性が高い。
脱出に船で逃げるのは目立ってしまい格好の的になる。
冬であれば凍死の危険性があるが、夏の蒸し暑い空気で凍える心配はない。
問題は体力だけである。
松陽は、精神的に疲弊しているAを心配して見つめた。
『A。いけますか』
ここで逃げれば本当の意味で
家族はなくなってしまう。
Aには、彼らに利用されるという道もあるが
『……うん。大丈夫……』
哀色の顔に笑顔を繕って
『行こう、先生』
腐った
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» コメントありがとうございます!ここまで読んでいただきオリキャラも慕っていただきありがとうございます! (5月5日 12時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - いつもありがとうございます。夢主ちゃんも勿論大好きなのですが、ぶっきらぼうでちょっと怖いけど本当は優しいお兄ちゃんも大好きなので、彼の話を心待ちにしておりました。 暑くなってきましたので体調に気をつけてお過ごしください。 (2023年5月3日 12時) (レス) @page39 id: e6fe50ece6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年4月21日 21時