親が思うほど子は馬鹿ではない 五 ページ13
『チッ……』
攻撃を受けても戦は怯まず、鉄管を振り回して天人たちを薙ぎ払う。
天人が数人、前から来て応戦するように戦は大きく振り被った。
しかしAは何かに気づいて
『お兄ちゃん後ろ!!』
『え……』
振り返った時にはもう遅い
戦の目の前に槍の刃先が見えた
しかし血は噴き出さず、代わりにガキンと硬い音がして、戦を影が覆った。
『全く。アレほど家から出るなと言ったのに』
『!!」
戦を護るように、男が割って入って槍を木刀で受け止めていたのである。
『き、貴様何者……ぐはぁっ!』
男は天人を木刀で薙ぎ飛ばした。
彼は狐の面を被って顔を隠していたが、戦とAは、その剣筋を見ただけで誰か分かった。
『な……んで……』
戦はその人物に唖然とする。
『貴方は相変わらず、前方特攻型のようですね……いつも鍛錬のときに言っているでしょう。相手を自分の死角に入れてはならない。敵がそこに入った時点で、己は必ず死を迎えると』
『なんで……先、生……』
男ーー松陽はフッと笑いながら、襲いくる天人たちを木刀で薙ぎ払っていく。
『貴方は昔からずっと、私の言うこと聞いて黙っていられる教え子ではなかったですからね。こうなることはある程度は予想していましたよ』
少し困ったようにして笑い、戦を片腕に抱きかかえてAの近くまでくる。
彼女の鎖を木刀で打ち壊し、腰に差していたもう一つの木刀を戦の前の地面に突き刺した。
『戦。闘いにおいて大事なのは、相手を死角に入らせないこと。ですが、もっと効率的かつ必勝的なのは……己の死角をつくらないこと』
『そうすれば、死角を突かれて致命傷を負うことも予想外の方向から攻撃されることもなくなる』
簡単に言うが、人間の視野はだいたい180度ほどで
それ以外の、特に背後は完全に見えなくなる
死角をつくらないとなると
敵全体の動きを読み、それに合わせて自らの体勢と視界を微調整しながら戦わなければならなくなる
相手の動きをよく観察し、的確な読みを立て、刻一刻と変わる戦況に対応できることが前提となる
並の侍では集中も途切れて怪我が増えるだけの戦術である
『戦。はたして貴方にーーできるでしょうか』
松陽が試すようにして言葉を放つ
戦は黙ってしまった
が、目の前の木刀を握って引き抜く
『ハッ……できるに決まってんだろ。アンタの、弟子なんだからよ』
ニッと笑ってAを護るように木刀を構えた
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» コメントありがとうございます!ここまで読んでいただきオリキャラも慕っていただきありがとうございます! (5月5日 12時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - いつもありがとうございます。夢主ちゃんも勿論大好きなのですが、ぶっきらぼうでちょっと怖いけど本当は優しいお兄ちゃんも大好きなので、彼の話を心待ちにしておりました。 暑くなってきましたので体調に気をつけてお過ごしください。 (2023年5月3日 12時) (レス) @page39 id: e6fe50ece6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年4月21日 21時