兎は飛ばないが、跳びはする 四 終 イラストあり ページ15
「男ってのはなァ……女に
阿伏兎は一度後ろのAに目をやり
「てめェみてーなガキに……俺の惚れた女を殺させるかよ」
瞳孔の開いた目で星羅夢を睨んだ。
バギャッと音が鳴って、番傘が阿伏兎によってへし折られた。
彼は胸部を撃たれてもなお立ち上がり、星羅夢へと拳を放つ。
星羅夢はそれを避けるが、避けられた拳がズバッと音を立てて空気を裂いていく。
「ッ、さすが夜兎……胸を穿たれても堕ちるどころかさらに強くなってるアル」
阿伏兎から距離を取り、星羅夢は折られた番傘を放り捨てる。
「だが、その状態で戦えば死に急ぐだけアル」
「フッ……なに言ってんだ。俺はなァ……
阿伏兎は幼き日に見たAの父を、
味方でいれば心強い、敵であれば、絶望しか与えてこない相手。
その面影はどこか、吉原で暴走したAを彷彿とさせる。
強い力を持った星人は、鬼のような殺意と狂気と畏怖を与えてくる。
強い星人と殺し合いに興じることは、つまりは死を意味した。
阿伏兎は一気に距離を詰めて殴りかかる動作をする。
しかし、実際に放ったのは強烈な蹴りで
「!?かはっ!!」
動きに騙された星羅夢は腹に蹴りを入れられて口から体液を吐き出した。
続けて上から阿伏兎の攻撃が振り下ろされる。
破裂音に近い高い衝突音が鳴り響いた。
阿伏兎の拳は、星羅夢の手によって受け止められていた。
しかしその手には、紫の線が走っていて。
「オイオイ、まさかあの妖器・星喰は拳にも寄生するのかよ」
阿伏兎は彼の手を見て顔を引きつらせる。
「拳もな、武器の一つなんだヨ」
星羅夢は力を込めて、阿伏兎に強打を放ち吹っ飛ばした。
「まあ……こんな芸当できるのは、あの子のアルタナをもらってるおかげなんだけど」
自分の拳の紫の線を眺めて、星羅夢は愛し気に目を少し細めた。
その瞳が愛情から殺意へと変わり、目の前の兎を見やる。
「さあ、今からおじさん臭い兎の、解体ショー アル」
ニィ、と口角を上げて星羅夢は楽しそうに笑った。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年2月26日 20時