月夜に歌を詠む 三 ページ26
入り口で大きな爆音が鳴り響く。
その音は屋敷内にとどろき、百華達が廊下をバタバタと駆けていく
銀時の方の騒ぎだけでなく、神威と鳳仙の戦いの際に晴太が逃げ出して晴太を追うために百華が駆け回っている
神威は慌ただしい空気に目を細め、窓に腰を下ろして外を眺めた
「侵入者だって。大した騒ぎだね」
「アンタが起こしてくれた騒ぎよりマシだろう」
阿伏兎は鳳仙の攻撃で潰された左腕に包帯を巻き手当てしていた。
「商売なんざ興味もねーくせに、珍しくついてくるなんて言うからおかしいと思ったんだ。アンタ最初から鳳仙とやり合うつもりだったな?」
「へへ、バレた?」
「バレたじゃねーよ、このすっとこどっこい」
阿伏兎は呆れてため息をついた
「おかげで取り引きも何もメチャクチャだ。駆け引きの道具も騒ぎの最中に逃げちまったしよォ」
「あー、あの子供か。すっかり忘れてた。大したもんじゃないか、あの中を逃げ出すなんて」
神威は晴太のことをすっかり忘れていた
「駆け引きなんか必要ないよ。吉原が欲しいなら鳳仙の旦那を殺してココを春雨のモノにしてしまえばいいんだ」
「アホか。あの化け物にそう簡単に勝てるか。だいたい俺たちのせいで春雨と夜王の戦争なんぞ始まったら
「その時は……
神威は笑った目をしたまま返した
元老は十二師団を持つ春雨の中の上層幹部、神威たちを管理する組織。
彼はそんな、自分を従える相手を殺すなどと言えるのである。
阿伏兎は神威の返答に少し黙ってしまった。
「……で、その後あなた様は海賊王にでもなられるんですか」
「それも良いかもね。上にいけばそれだけ強い奴にも出会える」
「ハイハイ、志の高い立派な団長なこって……夜王との戦いには興味も失せたんだろ。怖いジーさんに殺される前に帰る準備しておけ」
「ヤダ」
神威はにっこりと笑って断った。
「……ヤダってあんた、商売に興味ねーのにココに居座る必要あるのか?」
「あるよ」
「さっき子供連れ去る時に殴り合ったお姉さんに会いたいから」
「ああ、そういえば……『星影』だったか」
阿伏兎は通気口管の上での戦いを思い出す。
(アレは普通の女じゃねーぞ……だがまァ、夜王よりはマシだと思うが)
彼女の強さを何かどこか胸の奥でつっかえる感じがして阿伏兎は眉を寄せる。
神威は考え込んで黙る阿伏兎を不思議そうに見ていた。
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» コメントありがとうございます!いつもご愛読いただき嬉しいです!この先も楽しんで読んでいただけるよう頑張ります(ง •̀ω•́)ง✧ (2023年1月29日 22時) (レス) @page14 id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - 続編突入おめでとうございます!今回多めな戦闘シーンも、夢主ちゃんが毎回どのように強さを見せつけてくれるのか、周りがどう反応するのか、楽しみにしております。まだまだ寒いので体調に気をつけて頑張って下さい! (2023年1月29日 18時) (レス) @page14 id: e6fe50ece6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年1月28日 13時