つながれた兄妹 ニ ページ5
私が少し落ち込んでいると、戦君はこちらに振り向いて、はっきりと過去を問うてきた。
「お前、天人に親殺されたんだろ」
「！ 戦、その話は」
戦君の質問に、松陽先生は慌てた様子で会話を打切ろうとする。
「大丈夫だよ、松陽先生」
そういうと先生は目を見開いて、会話の制止をやめた。また、先生の眉が寄った。
「うん。私は天人に親を殺されたよ」
「……じゃあ、天人恨むじゃん。松陽先生、絶対こいつ将来天人たちを殺しにかかったりするよ、危ねーじゃん」
「戦、やめなさい」
天人にとって危ない人間を育てていると知ったら、周りがどういう反応をするか。子供ながら、私も戦君も迷惑がかかる先は松陽先生だと、分かっていた。
「ううん、そんなことしないよ」
「は？ あんた、恨んでないのかよ」
「恨んではいるよ、犯人のことは。でも、他の天人は関係ない。人間が放火や強盗、殺人や事件を起こすように、どんな種族でも犯罪を犯す人はいる。犯人が他種族でも、その種族の人たち全部を恨むなんて理不尽だから。だから、犯人だけを、恨むの。強く、強く、強く、犯人だけを」
「……」
「A……」
二人は驚いた様子で押し黙った。子供には重すぎる話だったけど、戦君は目をそらすことなく私を見つめていた。
「んじゃ、俺はお前が幸せになれる場所を作ってやる」
「え？」
今の話の流れからして、戦君は絶対に私を避けると思っていた。けど返ってきたのはそれと真逆の対応。理解できずに困惑した顔で彼を見る。
「お前が生きてく中で誰かを恨む面があるなら、お前が幸せになる面も作る必要がある」
「えっ、別にそんな必要は」
「俺が決めた」
「ええっ」
「俺が、お前が幸せになる土台を作る！ だから、お前は妹として俺の作ったその土台で生きろ！」
「いくさ、くん……」
「それに松陽先生が頼んだことだしな。ちゃんと面倒見てやる。俺のことは兄ちゃんと呼び慕えよ」
戦君はそう言って腕を組んで胸を張った。その後ろで、松陽先生はクスクスと笑っている。
「……うんっ、お兄ちゃん！」
その光景が、暖かくて、涙が出そうになった。
ある日私は、家族を失った。
そして、松陽先生が新しく家族を結んでくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 300人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
刹那＊桜(プロフ) - きゃすみさん» 返信遅くなってしまってすみません！！コメントありがとうございます！ (5月14日 14時) (
レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
きゃすみ(プロフ) - もう少し行あけると読みやすいです。でもめっちゃ面白かったです！！ (2022年10月10日 13時) (レス) @page3 id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2021年2月13日 8時
