長谷川さん ニ ページ35
「……長谷川さん」
「なんだ?」
Aに名前を呼ばれ、前をぼーっと眺めていた長谷川は彼女の方に向く。
「私は、自分の信じる道を進めばいいと思います。例え命と天秤にかけても、命を捨てることになっても」
「アンタそれ」
「でも」
長谷川の言葉を遮り、Aは声を上げた。
「もしそれが他から見て特異なものだったとしたら、それを指摘されたときに見つめ直せばいいんですよ」
Aは勢いよくベンチから降りて長谷川の前に立つ。
「そうやって生きていくほうが、気持ち楽でしょう?」
太陽の光がニッコリと笑う彼女の首の痣を鮮明に長谷川に突きつける。
明るく皮肉を突き刺す太陽光と眩しい彼女の笑顔に、彼は困った顔をする。
「十一も年下のガキに諭されるとは、俺はまるでダメなおっさんだな」
自虐しながらも彼は笑っていた。
「ほんと、守りたくなるような人間だなアンタ」
「? そう、ですか?」
長谷川に言われたことがいまいちピンときていないAは不思議そうにする。
長谷川もベンチから立ち上がり、軽くAの頭を撫でた。
「困ったときはいつでも頼ってくれ。力になれることは少ないが、Aが俺を守ってくれるように俺にもアンタを守らせてくれ」
それは娘を過保護なほど心配する父親のようで、Aは目を見開いた。
ずいぶん昔に触れられなくなってしまった家族の温かみをこの時また感じた気がして、
「……」
「な、なに泣いてんだ!? わ、悪い! 撫でられるの嫌だったかっ」
「い、いえ。大丈夫なんです、けど……す、すみません、ちょっと……」
Aは頬に感じる生ぬるい水気に驚き、慌てて目をこすった。
終【閑話 長谷川さん 】
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刹那*桜(プロフ) - きゃすみさん» 返信遅くなってしまってすみません!!コメントありがとうございます! (5月14日 14時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
きゃすみ(プロフ) - もう少し行あけると読みやすいです。でもめっちゃ面白かったです!! (2022年10月10日 13時) (レス) @page3 id: e6f2b24efc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2021年2月13日 8時