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お昼休みを知らせるチャイムの音が鳴る。
それと同時に授業が終わる。
先生が教室を出て行くと、
生徒達が一斉に動き出した。
お弁当箱が入った小さなバックと水筒を持ち、
教室の後ろのロッカーから
一冊の本とハーフケットを取り出すと、
いつもの場所へと向かう。
人気のない非常階段。
いつも昼休みを過ごしている所だ。
この、人の来ない寂しい非常階段で
昼食を取り、余った時間で本を読むのが
私の日課となっていた。
時々ソアやジェイ、ジョンウォンと
生徒会室で会話を楽しみながら食べたりもするけど、
この誰にも邪魔されない静かな非常階段で
ゆっくりと食べるのが好きだった。
階段の段差に腰を下ろす。
踊り場からは裏庭が見えて
そこから入ってくる外の風は
もう春だというのにまだ肌寒い。
用意していたハーフケットを
膝に掛け、寒さを凌ぐ。
「いただきます」
お弁当箱を開け、静かな食事を始めた。
本を読みながらお弁当を口に運ぶ。
少し行儀が悪いけど他に誰もいないので
文句を言われることもない。
そう思っていたのも束の間、
階下からギィっと扉の開く音が聞こえてきた。
この非常階段には昼休みに近付かないようにと
親衛隊が周知している。
きっとまだ掟のことを知らない
新入生が入ってきたのだろう。
親衛隊が立ち入り禁止と言ってはいるが
私としてはこの非常階段を私物化してる気はない。
周りが気を効かせてるだけで、
通るなら通ればいいと思っていた。
読書の邪魔さえされなければ
それで文句はないのだ。
特に気にすることなく視線を本に戻すと、
コツコツと誰かが上がってくる音がする。
階段を占領するように荷物を置いていたため
こちらに上がってきて横を通るのなら
場所を空けないといけない。
そう思って顔を上げた瞬間
下から上がってきたその人物の姿を見て
思わず手に持っていた箸を落としかけた。
作られたような美しい容姿と
人を魅了してやまないオーラを発し、
何にも無関心のような漆黒の瞳。
イ・ヒスンがそこにいた。
予想外の人物の登場に、息を呑む。
何故彼がこんな所に…
呆然とヒスンを見ていると、
こちらを向いた彼の瞳と重なった。
これまでのような
気のせいかもなどではなくて
間違いなく私を見ていた。
今までにないほど近い、彼との距離。
目を反らせない。
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作者名：yori | 作成日時：2022年4月12日 0時
