第65話 ページ19
場所を変えて本部の食堂。
カフェテリアのように開放的なその空間には、C級やB級がちらほらと見受けられた。
Aは一度辺りを見回し、人の少ない壁際の四人掛けのボックス席に環を座らせる。
「ちょっと待ってて」と言って、足早に向かったのは食券の券売機・・・ではなく自動販売機。
申し訳程度に置かれているそれに、結構珍しい飲み物が陳列されている事を知る者は少ない。
「えーと・・・あ、あった」
財布から出した千円札を突っ込んで、缶ジュースを買って席へと戻る。
お待たせと笑うAの両手には、『nassing!』と書かれた缶が二つ。
「これで『なっしんぐ』って読むんだって。意味不明だよね」
そう呟きつつ、Aは躊躇いなく缶ジュースのプルタブを起こす。
プシュ、という炭酸特有の開封音の後、Aはまたもや躊躇いなくそれを口に含んだ。
舌を刺すような刺激の後に、さっぱりとした梨の香りが鼻を抜けていく。
・・・うん、美味しい。
これは訓練終わりの飲み物にいいかもしれない。もちろんアップルティーの次に。
とりあえず、『新商品が出た』と嬉々とした表情で報告してくれた米屋に心の中で感謝した。
「・・・環も飲みなよ。美味しいよ？」
缶ジュースを自分の目の前に置いてプルタブを見つめ続ける環にそう声をかける。
すると環はハッと顔を上げ、小さく「いただきます」と呟いて缶を開けた。
炭酸が強い為か、好きなものは少しずつ楽しむタイプなのか、小さくくぴくぴと缶を傾ける環。
そんな環をまるで小動物でも愛でるような目で見ながら、Aは探るように尋ねた。
「最近なにか困ったこととかない？学校の成績・・・は大丈夫か。
楓さんの特訓が厳しいとか・・・面倒な人に絡まれるとか」
環は普通校に通いながらも数学の成績以外は群を抜いて良い。
加えて定期テストはまだ先なので、学校関連ではまずない。
ならば悩みの種は九割方ボーダー関連だろう。Aはそう推測したのだ。
ちなみにここでAが言う『面倒な人』とは、たいてい個人総合ランク1位および狙撃手1位、
射手1位やA級1位隊の“お荷物”などのことを指す。
「あ・・・えっと、大丈夫です。楓さんもちゃんと俺のこと、考えてくれてるんで」
環は頼りなさげにへらりと笑った。
「そう？ならいいけど・・・」
心配そうに首を傾げるAは気づかない。
目の前の彼が今、自分のことを『僕』ではなく『俺』と呼んだことを。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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シロナ(プロフ) - 世界さん» 温かい応援をありがとうございます！世界さんが楽しんでいただけたのなら幸いです。できる限り更新のほうも善処しますので、これからもよろしくお願いいたします。 (2016年6月6日 22時) (
レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
世界 - とても面白いです（≧∇≦）更新頑張ってください。 (2016年6月6日 18時) (レス) id: 5b7a28e31b (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 銀河さん» 温かい応援ありがとうございます！銀河さんのご期待に沿えるように、精一杯更新していこうと思います。私事により更新ペースはかなり遅いですが、よろしければ気長にお待ちいただけると嬉しいです。 (2016年1月19日 20時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
銀河 - とても面白かったです！シロナsが書く文章がとても読みやすかったです。頑張ってくださいね。 (2016年1月17日 7時) (レス) id: 550193059d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年10月23日 23時
