『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ45)

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第43話ページ45

あっという間に二日が過ぎた。

本部ではもうじき遠征部隊が帰還するというニュースが飛び交う中、浮かない顔の女性がひとり。

その女性は心ここにあらずといった状態で机に肘をつき、アイスコーヒーを見つめている。

「・・・楓さん？どうかしたんすか？」

いつもとだいぶ様子の違う女性・・・楓を見かねて、通りすがりの米屋が声をかけた。

「あぁ・・・米屋くん。・・・まぁ、ちょっとね」

楓がぎこちない笑みを浮かべて応じると、米屋は何も言わずに楓の向かいの席に座った。

そして手に持っていた紙パックのジュースを机の上に置き、軽い口調で喋り出す。

「楓さんでも悩み事とかあるんすね。驚きました」

「そりゃあ私だって人間だもの。悩みの一つや二つ、あって当たり前よ」

「その悩みって・・・やっぱ篠原のことですか？」

アイスコーヒーの中の氷をいじる手が止まった。

楓はゆっくりと視線を米屋の顔に向け、真剣な表情で口を開く。

「・・・米屋くんは、読心術のサイドエフェクトでも持ってるのかしら？」

「いやいや。楓さんじゃあるまいし。第一そんなにトリオン能力高くないっすよ」

おどけて返す米屋にため息をつきながらも、楓はポツリと本音を零した。

「オペレーターって、辛いわね」

「はい？」

その言葉には何重にも意味が込められていて、賢くない米屋にはいまいち理解できない。

やがて真意を問いただそうと言葉を探し始めた時、米屋の背後から規則的な足音が聞こえてきた。

「ここにいたのか、陽介。捜したぞ」

声をかけられた米屋が振り向くと、そこには三輪の姿が。

「おっ秀次。おれに何か用？」

目を漢数字の三の形にして悠長に応じる米屋に、三輪は呆れたように言う。

「もうそろそろ防衛任務の時間だ・・・どうせ忘れているだろうと思ってな」

「マジ！？やべぇ忘れてた！・・・てことですいません楓さん！話はまた今度で！」

焦り気味に紙パックを掴んで隊室へと急ぐ米屋。

それに続いて隊室へ向かおうとした三輪を、楓が呼び止めた。

三輪が不思議そうに楓のほうを見ると、楓は哀れみとも優しさともとれる表情で微笑んでいた。

「いい友達を持ったわね。三輪くん」

何を言っているのかわからない。訝しげな顔で三輪は首を傾げる。

楓が放った言葉の意味を二人が理解したのは、もっとずっと先の話だった。