第37話 ページ39
少し遡って朝10時。
本来なら既にそれぞれの業務が始まっていてもおかしくないその時間に、Aは会議室にいた。
目の前で椅子に座ってこちらを見ているのは城戸派一党。
睨みつけるような彼らの視線をものともせず、Aは淡々と言葉を発した。
「任務の概要は城守から聞きました。“黒トリガーの強奪と近界民の始末”、ですよね？」
あからさまに嫌味を込めて放たれたそれは、真っ直ぐに城戸司令へと突き刺さる。
城戸司令はAのその堂々たる言いっぷりに呆れたようにため息をつき、話を続けた。
「・・・そうだ。特殊任務部隊と遠征部隊、それに三輪隊を加えて任務に充てる」
「“特殊任務部隊の存在とそれに所属する隊員の情報は絶対機密”・・・では？」
「それに関しては問題ない。特殊任務部隊の隊員にはそれぞれ、ソロ隊員として参加してもらう」
あくまでも部隊の存在は隠し通すつもりでいるのか。
この継ぎ接ぎだらけの機密事項も、一体いつまでもつのだろう。
任務に支障が出ない限り、バレても別に構わないのだが。
そう思っているのはAだけではあるまい。
いっそ、全て明かして受け入れてもらえばいい。
遠征システムのように、ボーダー内の共通機密として。
「・・・って、今は関係ないか」
「？ 何か言ったか？霧玄くん」
自嘲気味に呟いたAの言葉を耳にし、城戸司令が眉を顰めた。
Aは「いえ、何でもないです」と答え、話を元に戻す。
「つまり、ソロのA級隊員として私たちに黒トリガーを奪ってこい、と」
「作戦は遠征部隊の帰還を待って追々説明する。やってくれるな、霧玄くん」
「お断りします」
「！？」
城戸司令が少しだけ目を見開く。どうやらこうなるとは思っていなかったようだ。
「特殊任務部隊の隊長としても、ソロ隊員としても、その命令は承認できません」
「霧玄くん！キミはこの任務の重要性を理解しているのかね！？」
バン、と机を叩いて抗議する鬼怒田に対して、Aは言葉で応戦する。
「勿論です。しかしそれが私を動かす理由にはなりません」
「ならばどうすれば動くというのだ！」
「それ以前の問題ですよ、鬼怒田開発室長」
Aは今まで見せたことのないような冷たい視線をその場にいる全員に向け、言い放つ。
「私のポリシー、お忘れになられてはいませんよね？」
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年7月20日 10時
