『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ38)

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第36話ページ38

「すんませんAさん！様子見てくれって言われてたのに・・・」

相手には見えないと知っていながらも、米屋は携帯に向かってぺこぺこと謝罪した。

『いや、米屋のせいじゃないよ。・・・環の具合はどう？』

「・・・だいぶ回復してますよ。ただの寝不足と貧血だったみたいで」

『そっか。ありがとう。今日の防衛任務は私が代わるって、環に伝えておいてね』

「了解っす。じゃ、失礼しまーす」

そう言って米屋は通話を切り、携帯を制服のポケットに仕舞った。

静まり返った放課後の教室。そこに残っているのは米屋と三輪の二人だけだった。

電話の様子を見ていた三輪は、一度小さなため息をつくと、米屋に向かって言った。

「俺たちもこれから任務がある。・・・あまり人の世話を焼きすぎるなよ」

「わかってるわかってる・・・じゃ、俺はちょっくら保健室行ってくるわ！」

二人分の鞄を担いだ米屋は、「また後でな！」とだけ言い残してとっとと去っていった。

それを見送ってから、三輪は何も言わずに昇降口へと歩き出した。

階段を下り、靴を履き替え、校門に向かって歩を進めた瞬間に足が止まる。

三輪の視線の先には不自然な人だかりと歓声が沸いていた。

その人だかりの中心にいる人物を目視した三輪は、踵を返して裏門から出ようと試みる。

しかしそんな目論みは、その人物が三輪を見つけたせいであっさりと潰えた。

「おーい、どこに行くんだ、三輪ー！」

「何であんたがこんなところにいるんだ、城守さん・・・」

わざわざボーダーのエンブレムを掲げた戦闘服を身に纏っているあたりがわざとらしい。

三輪は苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。

「何でって、ええと・・・Aの頼みでな。三輪が本部に行くまでの護衛を仰せつかる」

「いつの時代の側近ですか。・・・俺に護衛なんて要りません、帰ってください」

「・・・厳しいな。でもこれはAのサイドエフェクトに因る結果なんだ。我慢してくれ」

・・・サイドエフェクト。

その単語を耳にした瞬間、三輪の脳裏にはいけ好かないエリートのにやけ顔が浮かんでいた。

違う。今あいつは関係ない。

頭をよぎったその顔を払拭し、大人しく紗夜とともに本部へ向かう。

後にクラスメイト(主に男子)から質問攻めに遭うことは、このときの三輪には知る由もなかった。