『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ36)

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第34話ページ36

Aと迅が会話を交わす、ほんの10分前。

米屋陽介は自宅のベッドに寝転がりながら、お気に入りのマンガを読んでいた。

ベッドの隣に置いてある机の上には、広げられてさえいない課題のノート。

一瞬見ただけのこの光景で、米屋がどんな人物であるのかは容易く想像できるだろう。

やらずに登校しても大丈夫、頼れる人ならいくらでもいる。そう考えているのだ。

課題という名の現実から逃避している米屋を引き戻すかのように、ベッド脇に置いた携帯が鳴る。

マンガを伏せて携帯を覗くと、最近よく使うSNSに新着メッセージが届いていた。

ディスプレイに表示された相手の名前は『Aさん』。登録した際に米屋が書き換えた名だ。

「Aさん・・・？こんな時間に珍しーな・・・」

そう呟きながらトーク画面を開くと、そこにはAらしくない長文が記されていた。

『Aさん：夜遅くにごめんね。ちょっと米屋に頼みたいことがあってさ。

　最近環の様子がおかしいから、少し様子を見てあげて欲しいんだよね。

　ほら、米屋と環って同じクラスでしょ？面倒かもしれないけど、引き受けてくれると嬉しいな』

目を凝らして長文を読み終えた米屋が、少しだけ眉をひそめる。

「篠原？」

確かに米屋と環は同じクラスだ。もっと言えば三輪だって同じ。

ボーダー隊員同士ということもあってか、クラス内での三人の絡みは多い。

昼食だって他のクラスの隊員を交えて教室か屋上で食べるのが慣例化していた。

だからこそ、米屋は不思議に思ったのだ。

「今日話したときは、べつに普通だったけどなー・・・？」

いつもと同じ、少し頼りなさげな笑い方。

いつもと同じ、現代文だけに特化した頭。

いつもと同じ、平均的な体力。

・・・本当に、『いつもと同じ』だったのか？

考えれば考えるほど自信がなくなってくる。

言われてみれば確かに・・・いや、でもやっぱりいつもと同じだったか。

どちらにせよ、いま自分が考えただけでは何も解決しないだろう。

明日学校に行けば分かることだ。今日はとりあえず、もう寝よう。

米屋はトーク画面に短く『了解っす』と打ち込み、部屋の明かりを消して眠りについた。