『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ18)

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第16話ページ18

心に一抹の不安を抱えながら、ラウンジへと歩を進めるA。

防衛任務で隊員が出払っていて人が少ないせいか、廊下はいつもより静かだ。

「(迅はこの未来も予見しているのかな・・・56％・・・何も無ければいいんだけど。

　・・・ていうか三雲ってあの三雲君？彼が近界民と接触・・・？)」

真面目そうに見えた彼がまさかそんな・・・と考え込んでいると、携帯の着信音が鳴り響く。

差出人は迅悠一。件名にわざわざ『実力派エリートだよ』と書いてくるあたりが彼らしい。

苦笑しながらそのメールを開くと、そこには長文でこう書かれていた。

“三輪隊がメガネくんの友達にちょっかいを出そうとしてる。

　その友達っていうのが実は近界民なんだけど、Aちゃんなら驚かないかな？

　んでさらにその近界民のトリガーが、黒トリガーっていうのがちょっと厄介なんだよね。

　まぁ、とりあえずおれが秀次たちを止めるつもりでいるんだけどさ。

　城戸さんなら何言うかわかったもんじゃないし、Aちゃんにも少し手伝ってほしいんだ。

　さしあたって、今日の秀次、何％か分かる？”

迅にしては長い、それでいてまとまりのある文面だった。

Aはそれに一通り目を通した後、返信をタップして簡潔に“56％”と打ち込み、送信。

“送信が完了しました”という表示を確認してから携帯をポケットに仕舞い、ため息をついた。

「(城戸司令ならきっと、“近界民を始末して黒トリガーだけ回収”とか言うだろうなぁ。

　そのお鉢はいったい、誰に回ってくることやら・・・)」

今はちょうどA級上位部隊が遠征でいない時期。

それに秘密裏に“こと”を進めるのだとしたら、特殊任務部隊に任される可能性だってある。

ボーダーを裏から支え、運営に支障をきたすものを排除する。

それがAたちに与えられた、特殊任務部隊としての役目だった。

今日の任務説明だって、内容は9割がたその近界民の件についてに違いない。

「(・・・いや、違う？)」

上層部はまだその近界民が黒トリガーを所持していることを知らないはずだ。

そもそもそれが本当に近界民だという確証は・・・証拠はあるのか？

なかったとしたら何故・・・と考えを巡らせてから、ふと先程の三輪との会話を思い出す。

「・・・まさか、確認に行かせるためだけに三輪隊を派遣した・・・？」

納得のいく答えに至ったAは、ラウンジに向かっていたそのままの足で、外へと走り出した。