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「星合さん、僕は星合さんの体調は特に問題ないと思いますよ?」
すぐに穏やかさを取り戻した先生がおばあちゃんに言う。
「そうね、そうかもしれないわ。でも、もうすぐ星とひとつになるのよね、私」
(星とひとつになる…?)
何のことか分からず、心の中で首を傾げる俺をよそに、先生はまたおばあちゃんに言った。
「星詠みの星合さんがそうおっしゃるのならそうなのかもしれません、でも、僕は医者として、今の段階で星合さんに問題がないことは保証しますよ」
それを聞いてもおばあちゃんは、ニコニコと笑うだけだった。
「ありがとう先生。…後のこと、頼むわね」
先生ももう何も言わずに、寂しそうに笑うだけだった。
星合家を後にしてから、車で病院まで戻る途中に、先生は先程のおばあちゃんの言う意味を教えてくれた。
星詠みの一族は、人は死んだら星と一体となり、そこからまた生まれ変わる、と考えているんだそう。
不思議な考え方やなあ、と思うと同時に、要はおばあちゃんが、自分はもうすぐ生を終えると確信しているんや、と気付いて、なんとも言いようのない寂しさが込み上げた。
それと同時に、前回の訪問時を思い出した。
先生が病院に忘れ物をしたと慌てて車で取りに行く事になり(俺が行くと言ったのだけど自分が行った方が早いから、ここに残っていてくれと言われた)、1時間弱ほど、星合のおばあちゃんと俺の二人きりになったことがあった。
「坂田くんは、こちらへ来てどのくらいになったのかしらね?」
「へ!?あ、えーと…多分、1年半くらい?ってとこですかね」
それまで、おばあちゃんと直接個人的な話をすることはほとんどなかったから、急に話を振られてビックリした。
「まだそんなものなのね、もう長いこと来てくれているような感じだったから」
「そうですかね、そう言ってもらえると嬉しいなあ」
これは本心だった。
田舎なら少しはある、排他的な雰囲気を感じる事もあったから、自分が受け入れてもらえていると感じられる言葉は単純に嬉しい。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時