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一旦言葉を切った後、坂田くんは今度は私の耳元へ口を寄せた。
「そんな風に見られたら、俺、期待しちゃうんだけど。」
「っ！」
ふわりと囁かれた言葉にビクッと反応してしまう。と、その様子を見て坂田くんがあはは、と笑った。
「なーんて。無自覚に誘ってるくせに、耐性は無いんやなあ、可愛いなあ」
しれっと“可愛い”と言われた事にも恥ずかしくなって、顔はどんどん熱くなる。
その私の様子をひとしきり見ながら何故か満足げに笑って、坂田くんはまた夜空を見上げた。
「…また、星の話、教えてくれる？」
ゆっくり、低めの優しい静音で紡がれた彼からの言葉に、私もゆっくりと頷いた。
「私が教えられる事なら…そのかわり、」
「？」
交換条件を出そうとした私を坂田くんは不思議そうに見た。
「そのかわり…、その、また、こうやってお散歩に誘って、ね？」
今日坂田くんとゆっくり歩いて、心がすうっと軽くなって癒される気持ちがした。
彼が纏う優しい雰囲気と、それが良く現れている優しい口調が、そういう気持ちにさせてくれるのだろうと思う。
…また、こういう時間を過ごしたいな、と、素直に思えたのだ。
私の言葉に少し目を丸くした坂田くんは、そのまんまるな瞳を蕩けるような笑顔に変えた。
「もちろん、喜んで」
二人で見つめ合って、夜だから控えめに笑い合って。
そんな様子を夜空の星座たちが見守ってくれているような夜だった。
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作者名：しろ鮎
| 作成日時：2023年8月29日 20時
