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このまま暮らしていって、いつか、家族になって、その後新しい家族が増えたりして…
…半年前、病院での“星空デート”の時に見たビジョンは、将来の私たちなんだろうか。
ふとした時に思い出して、そう考えるんだけど、どうにも恥ずかしくて、坂田くんには言えてなかった。
そんな彼に声をかけられる。
「A、時間ないんじゃないの？」
「えっ！あ、ホントだやばい！」
朝から妄想に引き込まれてしまって出勤時間が迫ってしまっていた。
身支度を整え、パタパタと玄関まで行くと、坂田くんもついてくる。お互いに見送りはしようと話し合っていた。
「じゃあ、行ってきます、坂田くんも気をつけて行ってらっしゃい」
「ん、Aもな」
お互いニッコリ笑って、…そうすると、数秒、間が出来る。
目の前の彼は、ニコニコしながら何かを待っている。
私が戸惑っている様子を見るのも楽しんでいるんだと思う。
「…早く、せえへんの？」
「う、ん、」
どうにも勇気が出ない。
時間も迫っていて、目の前の彼の様子にも後押しされ、
そっと背伸びをして、彼に口付けた。
「〜〜〜っ、いってきます！！」
「んふふ、いってらっしゃい〜」
真っ赤になった顔をマフラーで隠し、すぐ振り向いて玄関を出た私を、おそらくニヤニヤしながら見送る彼。
『先に出るほうから行ってきますのキスをする』なんて、決めなきゃ良かった。
と思いながらも、心は浮かれていた。
季節はもう冬を迎えている。
夜には雨もあがって星空もよく見えそうだから、帰ったら彼と散歩に出て「冬の大三角」でも見つけようかな。
そう思ったら足取りも軽くなって、私は軽快に通勤の道を歩き出した。
〈終〉
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作者名：しろ鮎
| 作成日時：2023年8月29日 20時
