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それから、半年後。
お付き合いを始めたものの、お互いに空き時間を合わせるのが難しく、坂田くんのご飯問題も解決していないということで、話し合った結果、二人で私の家に一緒に住む事になった。
おばあちゃんがいなくなって一人になった私にはこの家は大き過ぎて、でも手放すわけにもいかず、私としてもちょうど良かった。
少し慣れてきた、二人で囲む朝ごはん。
正面の彼がぼやいた。
「ここでの暮らし、めっちゃ快適なんだけどさ…俺今からこんなんで大丈夫?完全に居候やん」
「居候だなんて思ってないけどなあ」
ここで一緒に暮らし始めてからずっと恐縮した様子の坂田くんを、毎日なだめている気がする。
ホントに、居候だなんて微塵も思ってないんだけど。
「ごちそうさまでした」
「あ、俺片付けするからそのままでええよ」
「ありがとう」
今日は私の方が早く家を出る日。
私たちはその日によって家事の担当を変え、その生活もそこそこ軌道に乗ってきていると思う。
「…今日は雨が降るね」
「そうなん?こんな晴れてんのに?じゃ、洗濯物は外干さん方がええね」
「うん、そうだね、よろしく」
あれから、少しずつだけど、星を感じることが増えてきたように思う。
それは、いつもとなりにいてくれる、坂田くんのお陰だと思う。
「坂田くんも出勤するときはちゃんと傘持って行ってね?この間も雨降るよって言ったのに持って行かなかったし」
「あれは、たまたま忘れただけやし!」
口を尖らせて反論する彼に、笑みが溢れる。
こんな些細なことで笑える日常が、とても幸せだと思う。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時