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「で?Aは俺に何かあるの?」
私が取った彼の手を、彼が少し振る。
さっきの彼の言葉に返答しようと手を取ったままだった。
急に恥ずかしさが込み上げてきたけど、期待に満ちた彼の紅い瞳が、星空と同じようにキラキラと煌めいていて、それに押されるように言葉を発した。
「その…、私も。」
「?」
「私も、ね。この先、坂田くんと、素敵な物語が作れたらな、って、思うよ」
彼の瞳がより輝いたように見えて、慌てて付け足した。
「でも、でもね。ちょっと、不安なの」
「…不安?」
「私が、星詠み、織姫だってことで、坂田くんに迷惑かけちゃうんじゃないか、って、それが心配で」
やっと、言えた。
ずっと引っかかっていたこと。
これに対する返答が、私にとって悲しいものでも仕方ない。
でも、聞くのは怖い。
俯いて彼の返事を待った。
とても長く感じた、少しの沈黙の後。
正面の彼が動いた、と思ったら、
ふわりと抱きしめられた。
「っ…!」
さっきもされた事なのに、慣れない。
自分の鼓動が体内でよく聞こえるくらいは高鳴っている。
耳元で、彼の優しい声が聞こえた。
「そんな事。俺が、彦星になりたいって言ったやん?
Aが望むなら、どんな願いだって、叶えたげるよ」
「どんな願いも?」
「…まあ、出来るだけ…努力、します」
坂田くんの言葉に少し聞き返すと、最初は自信を持って言っていたのに後半が少しトーンが下がってしまい、また笑ってしまった。
「もー、笑わんといてよ…せっかくカッコつけたのにぃ」
私の肩口に顔を埋めるように俯いた坂田くんを、慰めるように、背中をポンポンと叩いた。
お互いを抱きしめ合うような形になり、また、坂田くんの鼓動が聞こえる。彼の鼓動も、やはり速くて、一緒の気持ちだというのが良く感じられた。
しばらくそうしていた後、彼がそっと私を覗き込むように離れた。
見上げた彼の瞳は、星空と同じように煌めいている。
その瞳が少し細められ、彼が言葉を紡いだ。
「いつまでも、いつまでも、
好きだよ」
その言葉に、また笑顔で返して。
二人きりの秘密の夜は、星空に見守られながら、更けていった。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時