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私の疑問が表情から読み取れたのか、坂田くんがニコニコしながら答えを伝えてくれた。
「今日は七夕やし、お天気もまあまあやから、星が見えるんじゃない?」
「え、あ、そうか…七夕、なんだね」
忙しさにかまけてすっかり抜け落ちてしまっていた。
倒れたのが七夕前日だったから、今日が七夕なんだ。
七夕の星空か…職場で散々来館の皆さんに説明していたのに、病院じゃ見られないな、と思っていると、坂田くんが笑みを深めた。さっきと違って、いたずらを思いついた子供のような笑顔をしている。
「ほんとは患者さんはダメなんやけど、屋上まで上がって星でも見よ?A見たいやろ?」
「え、大丈夫なの?坂田くんあとで怒られちゃわない…?」
星空が見たいと思っていた私にはとても嬉しい提案だったけど、それよりも先にその後の坂田くんのことが気になった。
「俺の心配してくれるん?優しいなあAは」
「そんなことないと思うけど」
「大丈夫、その辺上手くやれるのが俺やから」
また悪戯っぽく笑って坂田くんが言うから、私も笑って頷いた。
「じゃあ、また、後で。…消灯時間過ぎたくらいに来るから」
私に伝えたら満足したのか、立ち上がった坂田くんを見送るようにベッドの上から見上げると、彼は優しい目で私を見下ろした。
「夜のデート、楽しみにしてる」
言うだけ言うと、彼はパッと踵を返して病室を出て行ってしまった。
デート、なんだろうか。
言われたことを含めるように頭の中で繰り返すと、私の頬はどんどん熱くなってきた。
熱が出たりしないように、と、慌ててベッドに横になった。
心臓を落ち着かせようとしたけど、さっきの約束を思い出しちゃうと、途端に鼓動は速くなる。
結局落ち着かないふわふわとした気持ちで、消灯時間までを過ごした。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時