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「ご、ごめんなさい…」
確かに、友達がいきなり救急車で運ばれたなんて聞いたら驚くだろう。
ましてや、坂田くんにとっては職場だ。心配かけて申し訳ない…という気持ちで一杯になり、俯いた。
私の頭上でため息をついた後、坂田くんは続けた。
頭に手を乗せられたままなので、私は顔を上げることも出来ず、彼の表情は分からない。
「ホンマにもう…心配させんなよ」
ポツリと、彼が言葉を零した。
切なくて、想いのこもった言葉に、心臓が掴まれるような感じがした。
返事を迷ううちに、坂田くんは手を離した。
「とりあえず、せっかく俺が持ってきたんやし、ご飯食べて?食べれる?」
「あ、うん、食べれるよ…楽しみにしてたんだ」
「病院食楽しみにする奴なんてそうそう居らんけどな…まあ元気ならええか」
苦笑しながら、坂田くんが持ってきてくれた夕食に手をつけようとした。
トレイに伸ばした手を、彼に遮られる。
「…?」
彼の方を見ると、坂田くんはニッコリと笑った。
「まあまあ、患者さんの手助けをするのが看護師の役目やし?俺が食べさせてあげる」
「え!?いや、もう一人で食べられるよ、大丈夫」
「いやいや、その為に俺も来たんやしなー、まあ今はもう勤務外やけど」
色々と話が破綻している気もするけど、
要は私に、その…食べさせたいってこと?
でも、点滴ももう外れているし、あとはゆっくりしていれば明日の朝退院と言われている。
「心配かけちゃったし…、これ以上坂田くんに迷惑はかけられないよ」
「なら尚更、俺のお願い聞いてほしいな?」
坂田くんはまた慣れた手つきでお椀を持ち、スプーンで中身をすくってこちらへ向けてきた。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時