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その後も少し横になったり、スマホに届いている同僚からの心配のLINEに返事をして過ごした(無断欠勤になっちゃったかと心配したけど、どうやら“彼”が気を回して私の職場へ連絡してくれたらしい)。
日没が遅いとはいえ、陽が落ち着いてきたかなと感じる頃、病室の外が賑やかになっていた。
夕飯の配膳の時間らしい。
そのうち、私の居る病室にも、コンコン、とノックがされた。
「はーい!」
せっかくだから病院の食事を楽しもう、と、ベッドの上に座ったまま元気よく返事をすると、引き戸が開く。
てっきり、お昼の時と同じ看護助手のおばさんかと思いきや、
「失礼します、星合さん、お夕飯お持ちしましたー」
「っ…!」
トレイを持ってきたのは、赤い髪に紅い瞳の、“彼”だった。思わず息を呑んだ。
「さ、坂田くん…!」
何て言おうか、どんな顔をしたら良いか分からずあわあわする私を余所に、坂田くんは慣れた手つきでテーブルにトレイを置いた。
そして、私の許可も取ることなく、ベッド脇の椅子を引いて腰掛け、じっと私を見つめてきた。
しばらく無言で顔を見つめられる。
私は、羞恥心と、何か分からない感情で、顔を熱くしながら視線をあちこちに彷徨わせた。
しばらくの間の後、彼の腕が急にこちらへ伸びてきた、と思ったら、
「ホンマにもー、この子は〜!」
「ふぁっ!?」
いきなりわしわしと頭を乱暴に撫でられて、変な声が出た。
そのままの状態で、坂田くんは話し出す。
「いやマジで、Aちゃんが救急搬送されてきたなんて聞いた時心臓止まるかと思ったわ。めちゃめちゃ心配したんやからね!?」
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時