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おにぎりをもぐもぐ頬張りながら、さっきの同僚が置いていってくれたクッキーの包みを持ち上げる。
駅前の人気洋菓子店のもののようで、星形のクッキーにアイシングがしてあった。
そういえば、あと数日で七夕なのだ。
(…七夕くらい、会えたら良いんだけどな)
最近会っていない彼をふと思い出して、
慌てて首を振った。
なんでそんな事思ったんだろ、…坂田くんに会いたい、だなんて。
確かに、お散歩仲間?として仲良くさせてもらってるけど、それ以上でも、それ以下でも、ない、はず…?
でも、彼は彦星候補だ。
それを彼自身はどう思っているのか、分からない、けど。
それでも、私に好意を向けてくれていることくらいは、今までの彼の行動で分かる。
それに応えても、良いのだろうか。
私が彼に好意を向けても、良いのだろうか。
ふと、彼がいつも見せてくれる、少年みたいな屈託のない笑顔と、時折見せる大人の男の人らしい優しい微笑みが頭の中で交差して、顔が熱くなった。
ぐるぐると余計なことを考えてしまい、また首を振って、PCに目を向けた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
(…ちょっと頑張りすぎたかも)
七夕が明日という日。
普段は残業もない平和な職場なのだけど、色々と立て込んでいるせいで今日はかなり遅くなってしまい、スタッフの中では最後の退勤になってしまった。
通用口を出るときに、顔見知りの警備員さんに「こんな遅くまで仕事?無理するなよ〜」と労われながら帰路に着いた。
足取りが、重い。
通常の、受付・館内の案内業務で棒のようになった足、展示の企画、準備、雑務処理でフル回転した頭。
なんなら就職して以来、一番忙しいんじゃないかってくらい忙しかった。
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2023年8月29日 20時