⭐︎ ページ15
.
同窓会会場から駅までの道を、センラくんと二人で歩く。ふと思い出したことを聞いてみた。
「ね、今日はなんで、私と一緒なら良いよ、だったの？」
お酒が回っていつもより緩くなったセンラくんが、ふにゃっと笑って言った。
「まあ、牽制と、外堀埋めるためかな〜」
「…どういうこと？」
それが質問の答え？なんの話なのかさっぱり分からないので聞き返すと、センラくんは「分からんの？も〜」と頬を膨らませた。
その可愛らしい表情から一転、彼はすぐにニヤリと笑った。
まだお酒が残っているらしい彼の笑みは、元々の色気をさらに増した妖艶な笑みに見えた。
「…鈍感Aちゃんには俺が一から教えたるわ、よう聞き？」
言い方にも色気が乗り、さらに、横に並んでいた私の腰に腕を回してきた。
軽く彼に抱き寄せられるかたちになる。
いつもの彼の香水と、お酒の香りを近くに感じて、状況を理解したら、一気に顔が熱くなった。
「ちょ、っと、センラくん…！」
「逃げんなって」
身を捩ったけど男の人の力には勝てる訳もない。
私がじたばたしたからセンラくんは余計に腕に力を込めた。
もう夏も間近の時期だから二人とも薄着だし、触れている部分から相手の体温が感じられる。
完全に恋人同士が寄り添って歩いてるようで、恋愛経験の乏しい私には刺激が強すぎる。
センラくんは酔っているから仕方ない、と思い込んだものの、恥ずかしくて俯くしかなかった。
そんな私を見て、んふふ、と満足げに笑った酔っ払いセンラくんは、私の耳元に口を近づけた。
「Aは俺のやって、地元の奴らに知らせておけばもう誰も寄ってこないやん？」
「え、あ、…え？」
「もう、ずうっと俺の側におってくれてええのに」
甘い言葉が次々と囁かれる。
恋人同士でもないのに、彼は一体何を考えているのか。
「せ、センラくん、まだ酔ってるんでしょ…タクシー捕まえて帰ろ、先にセンラくんち寄るから」
「嫌や」
煩い心臓の音を抑えるように私が発した言葉は、意外にも彼には拒否されてしまった。
「嫌や、そんなの…Aをちゃーんと送り届けな…俺はAを護りたいねん」
彼がこんな風に自分の意見を通す姿は珍しい。見上げた彼の顔は、真剣にこちらを見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» 白雨さんー！お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！勝手に心の中で師と仰ぐ白雨さんにそんな風に言っていただけるなんて、とっても嬉しいです。引き続き温かい目で見守っていただけたら心強いです、また覗いてやってください〜！ (9月4日 12時) (
レス) id: 452c1db09c (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - セさんルート完結おめでとうございます〜！私はやっぱりしろ鮎さんの書く文章が大好きです……！展開も、表現も、ストーリー全体も全て飽きなんて感じさせなくて、心から尊敬します。未だに他の小説も読み直したりしてます。別ルートのお話も楽しみにしております！ (9月1日 0時) (レス) id: 4da6c03140 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» わー！ちぇろさんだ！お久しぶりですご無沙汰してます〜！毎度宣伝しないのに見つけてくださって、コメントまでくださってありがとうございます！ホントに長い間読んでもらって、作者冥利に尽きます。しばらくこのシリーズが続くのでまた次作もよろしくお願い文字数 (8月23日 19時) (レス) id: 452c1db09c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ - しろ鮎さんの小説を初めて読んでから約4年が経ちましたが今もこうして新しいお話を見つけることができて幸せです。これからもしろ鮎さんのペースで更新待ってます！連投失礼しました、次のシリーズも楽しみにしています！ (8月23日 2時) (レス) id: cd65e0c157 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ - お久しぶりです！素敵なお話をありがとうございました！モチーフになっている七夕曲、大好きな曲なので歌詞が元になったセリフが出てきてキュンキュンしました！幼馴染の世話焼きセさんという設定すごく刺さりました… (8月23日 2時) (レス) @page31 id: cd65e0c157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろ鮎
| 作成日時：2023年7月24日 16時
