5 ページ6
.
「お菓子、欲しいんですか?」
「ほっ、欲しくなんかねーよ!」
秒速で返ってきた返事の割には、彼のしっぽがゆらゆらと揺れている。あのしっぽは飾りではないらしい。
…お手本になりそうな程のツンデレ系だ。
笑いそうになるのを堪えて、彼に言った。
「友達に配る用に作ったものですから、良ければ食べてください?」
そう言うと、一瞬彼の表情がぱあっと明るくなった。
けど、すぐまた不機嫌そうな顔に戻る。
「しょ、しょうがねえから貰ってやるよ!」
「うま、」と小声で言いながらパクパク食べる姿が可愛く思えて、堪えられずにクスッと笑ってしまうと、彼が耳をピクリと動かした。
そうして、「…なんだよ」と恥ずかしそうにこちらを睨む。
「いえ別に」と返したら、不服そうながらもまたお菓子を食べ始めた。
食べている間に、たぬきちゃんはやはりやまだという名前だということ、彼は、うらたさんというのだということを教えてもらった。
「ごちそーさん。じゃ、帰るわ」
「え、あ、ハイ…」
帰る時は意外とあっさりしていて、少し拍子抜けする。
が、うらたさんはその場で数秒私の顔を見た。
「……」
「?」
首を少し傾げて見せると、うらたさんが言った。
「…明日の夜、また窓開けておけ」
「…は?」
意図がイマイチ分からず聞き返すと、
「だから!また来てやるから、窓開けとけって事だよ!」
と、またツンデレな答え。
お菓子を気に入ってくれたということだろうか。
「わ、分かりました…」
私の答えに満足したのか、私が呆気に取られている間に、上着?の裾をひらりと翻して、たぬきちゃんと共に出て行ってしまった。
184人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花夜 - ツンデレうらさん可愛いですね!友達から漂って凝る気配って坂田さんですか? (2021年12月24日 22時) (レス) @page16 id: 02079f421c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろ鮎 | 作成日時:2021年11月4日 22時