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やがて、少し離れた所から声が聞こえた。
「あれー?こっち行ったと思ったのに…」
「ねえ、やっぱり人違いじゃない?こんなに暗いしさ…」
「うーん、だよね…こんな所に居るわけないか」
「そうそう!ほら、パレード始まるよ」
「ごめんね付き合わせて…行こう」
声からして女子高生くらいの子達だろうか。
一通りの会話をこっそり聞いたことで、センラさんがとった行動の理由を理解した。
彼女たちが遠ざかったのが分かったところで、センラさんが腕を緩めた。
「…ごめんな、少し前から付いてくる子たちが居るなあって思っててん…完全にはバレてへんみたいやったから撒いてしまった」
あの子たちに悪いことしたなあ、と、逆に彼女たちを思い遣るセンラさんは、本当に周りを見ている人だと、逆に感心してしまった。
「…どうする?このまま帰る?」
今から行ってもパレードが見られるかは微妙だ。人混みに戻るのも気になる。
見られないのは残念だけど、人の少ないうちに帰るのが良いような気がしてセンラさんに聞いたら、
「何言うてんの、見るに決まってるやろ」
と、また私の手を引いて、パレードルートからは少し離れた、人が余りいない場所へやってきた。
そこにあるベンチに腰掛ける。
「さっき、お掃除のお兄さんに聞いてん。ここなら、ちょっと遠いけどパレード全部見えるんやって」
この後の花火も見えるらしいよ、A見たいやろ、と、柔らかく笑う彼を見て、胸が一杯になった。
*
間も無く、パレードのフロートがやってきた。
ハロウィンバージョンの夜のパレードは煌びやかな中にも妖しい雰囲気があって、遠くからでも充分引き込まれる。
フロートが全部通り過ぎた後、程なくして、花火が上がり始めた。
涼しい中で見る花火は夏とはまた雰囲気も違って、幻想的だ。
すっかり花火に気を取られて夜空ばかりを見ていたから、隣のセンラさんがその私を見ていた事なんて、全然気がついていなかった。
全ての花火が打ち上がって、終了のアナウンスが聞こえた。思わず、ぱちぱちと拍手をする。
「わー…、ホント、すごかった…」
「ね?」と、同意を求めようとセンラさんの方を向いたら、彼は目を細めてこちらを見ていて。
愛おしいものを見るような目つきを感じて、なんだか恥ずかしくなった。
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しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» わー!白雨さーん!コメント下さってたんですね、返事がめちゃくちゃ遅くて申し訳ないです…ありがとうございます!ハロウィンにかこつけてイチャイチャしてるだけな感じですが(笑)、書いてて楽しかったです。次も今準備中なので(12月なのでアレです)良ければ〜! (2020年12月3日 22時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 新作出してらしたんですね……!今回の短編集も四人の特色がよく出ていて愛らしさを感じる雰囲気でした!ハロウィンのお話を書かれるとは予想していなかったので新鮮な感じです(笑) やっぱりしろ鮎さんの書くお話大好きだなーと思いながら読ませて頂きました(*´艸`) (2020年11月24日 22時) (レス) id: f9e7441818 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろさんご無沙汰してました、今作もお付き合いありがとうございました!一つのテーマを設けて作るの楽しかったので…またやろうかな?と思い始めてしまいました笑 またよろしくお願いしますー! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - リセットさん» 初コメありがとうございます、前作も読んで下さったんですね…嬉しいです!ときめきをお届けするのが私の作者としての目標なので、リセットさんにはお届けできたようで良かったです〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - せせ@れいとうるぅれっとさん» コメントありがとうございます、最後までお付き合い頂きありがとうございました〜!自己満足の小説なんですが、お楽しみ頂けて良かったです!またよろしくお願いします〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2020年10月11日 6時