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その後、幾つかのアトラクションや、昼のパレードを順調に楽しんでいると、辺りもすっかり暗くなる。


お土産も少し買って、後は夜のパレードと花火を見たら帰ろうか、なんて話しているうちに、センラさんの様子がおかしい事に気付いた。



「センラさん…?」

私が覗き込むと、彼は正面を向いたまま、


「…ちょっと、“撒く”で」

と一言だけ言った。



「……え?」

言っている意味が分からず聞き返したけど、次の瞬間には、私はセンラさんに、ぐんっと強く手を引かれ、人混みの中をするすると抜けるように早足で歩かされていた。



ちょうど、パレードを見るために向かう人たちの流れに逆らうように進んでいく。


人がパレードの方へ流れているせいで、ショップが並ぶ通りは人通りが減っている。

各ショップはハロウィンの装飾一色で、ショーウィンドウが怪しげな光を放っているため、明るさはいつもよりも控えめだ。

その中のさらに路地に入った薄暗いところで、「こっち」と一層手を強く引かれ、私たち二人はそのショップ同士の狭い隙間のところへするっと入り込んだ。



私を奥へ押し込めたセンラさんは、そのまま私を、正面からぎゅっと包み込む様に抱きしめる。



「…………!!」



「…しばらく、こうしてて」



突然の事で訳が分からない。

センラさんの、優しいのに少し焦ったような声と、彼のいつもの香水の香りと、早足で歩いてきたせいで上がっている息遣いと体温を感じて、一気に鼓動が速くなった。


自分の心拍数も上がっているけれど、正面のセンラさんの心拍数もかなり上がっている事が、密着しているせいでよく分かる。



彼は私を抱きしめたまま、しばらくピクリとも動かなかった。





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設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船   
作品ジャンル:恋愛
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しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» わー!白雨さーん!コメント下さってたんですね、返事がめちゃくちゃ遅くて申し訳ないです…ありがとうございます!ハロウィンにかこつけてイチャイチャしてるだけな感じですが(笑)、書いてて楽しかったです。次も今準備中なので(12月なのでアレです)良ければ〜! (2020年12月3日 22時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 新作出してらしたんですね……!今回の短編集も四人の特色がよく出ていて愛らしさを感じる雰囲気でした!ハロウィンのお話を書かれるとは予想していなかったので新鮮な感じです(笑) やっぱりしろ鮎さんの書くお話大好きだなーと思いながら読ませて頂きました(*´艸`) (2020年11月24日 22時) (レス) id: f9e7441818 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろさんご無沙汰してました、今作もお付き合いありがとうございました!一つのテーマを設けて作るの楽しかったので…またやろうかな?と思い始めてしまいました笑 またよろしくお願いしますー! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - リセットさん» 初コメありがとうございます、前作も読んで下さったんですね…嬉しいです!ときめきをお届けするのが私の作者としての目標なので、リセットさんにはお届けできたようで良かったです〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - せせ@れいとうるぅれっとさん» コメントありがとうございます、最後までお付き合い頂きありがとうございました〜!自己満足の小説なんですが、お楽しみ頂けて良かったです!またよろしくお願いします〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2020年10月11日 6時

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