Snow Dome 2（雑多短編集） (ページ48)

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理性と衝動ページ48

参考リクエスト:ノア

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目黒蓮・阿部亮平(同居)

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阿部side

ダメだ、ダメだと思いながらも一段ずつ階段を降りていく。

寝つきが悪くて一度寝たと思ってもまた目覚めてしまって。そういう時に頭の中を巡るのは最近の自分についての反省会とはるか昔の記憶。

昔嫌だった些細なことや苦しかったことをなぜかピンポイントに思い出しては苦しくなる。

そんなことを考えたって意味ない。そんなこと言われなくても分かってる。

でも俺は自分の存在意義を見いだせなくなって、自分に罰を与えないといけない気がしてくるんだ。

電車に飛び込む勇気もなければ高いところから飛び降りる勇気もない。

でも不思議なことに自分の身体に傷をつけることに関しては抵抗が無くなってきてしまったし、その行為が俺を落ち着けてくれるようになった。

自分を罰して許されてるつもりになってるんだ、俺は。

それでも最近はめめのおかげで自分を傷つけることは減ったと思う。傷もちゃんと皮膚科に連れて行かれて手当されるようになって、自分で上から抉ることも減って。

それでうまくいってたはずなのに。

今日だけ、は。

どうしても衝動が抑えられなくて。多用しないように少し渡されている安定剤も飲んだけどダメで。

服の上から傷の部分を叩いたり引っ掻いたりしても落ち着かなくて肌に爪を立てた。それもダメ。

阿部「っ、ぁー…」

肌が切れる感覚と滲む血。じわじわと熱くなる腕と息が詰まる程の痛み。

“その感覚”を思い出してしまったが最後。めめのことを裏切る気持ちなんてもはやなくて。自分で精一杯で。

気づいたらリビングの奥にある棚からカッターを手に取ってた。

真夜中の、電気もついていないリビングが俺の負の気持ちを増幅させた。

カッターを握る右手が震える。最後の抵抗か、言い訳のためか。刃を出す前に服の上からカッターをあてて切るように手前に引いたけどそんなので衝動を抑えられる訳がない。

なんとなく目につかないようにリビングのテーブルの下に潜り込んで座り込む。

カチカチと刃を出す音や、暗闇できらりと光るそれに魅了されてしまってるんだ。

だから、気づかなかった。

阿部「っ！？」

目黒「阿部ちゃんそれだけはダメ」

グッと強い力にカッターを持っていた腕を引かれてテーブルの下から引き摺り出される。

見たことないほど怖い顔のめめが怖かった。

…それでも今日は、ダメだった。