Snow Dome（雑多短編集） (ページ18)

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岩本side

パタン、と扉の閉まる音。

阿部はそのまま、部屋を出ていった。

まだ朝食の時間でもないし、さっきのこともあったから、不安で。

そっと後を追いかけて俺も部屋を出る。

一定の距離を保って追いかけていくと、だんだん寮の端っこの方に向かっているのだけがわかる。

俺もこんな奥まで来たことなくて、ちょっと怖かった。

しばらくすると、ある扉の前で立ち止まり、そっと中に入る阿部。

上にある、部屋の表記を見たが、なにも書いていない。

なんの部屋なんだろう、と考えていると、そっと肩を叩かれて、声が出ないほど驚いた。

恐る恐る後ろを見ると、少し背が低め…に見える男性。

見たことない顔だったけど、胸についた名札から、学校の生徒でないことが分かった。

その人は口元に指を当てて、静かに、ということを俺に伝えてくる。

そのまま腕を引かれて、さっきの部屋の隣の隣の部屋に入った。

佐久間「ごめんね〜びっくりさせちゃったね！」

やっと口を開いたその人は、佐久間大介、と名乗った。

名札には、スクールカウンセラーと書いてある。

部屋を見渡すとぬいぐるみが置いてあったり、壁には装飾があったりと、柔らかい雰囲気が伝わってくる。

岩本「あの、」

佐久間「もしかして、阿部ちゃんの同室の岩本くん？」

岩本「あ…はい」

佐久間「阿部ちゃんから話だけ少し聞いてるよー！筋肉がすごいって！」

テンションが高いのか、元々声がでかいのか。

ニコニコ話す佐久間先生は、確かに、スクールカウンセラーだというだけある。

柔らかい笑顔で、俺も不安な気持ちが和らいでいった。

佐久間「で…阿部ちゃん何かあった、？」

そう聞かれたので、朝の出来事を伝え、心配でついてきたことも話した。

佐久間「あー…なるほどね、心配してついてきてくれたんだ、ありがとね」

岩本「いえ…えっと、あの…」

佐久間「あは、ここまできたら気になるよね〜」

俺の気持ちを察して、佐久間さんは何かを考えている。

佐久間「とりあえず一旦、阿部ちゃんの様子を見てくるからちょっと待ってて」

岩本「はい」

そう言って出ていった佐久間先生。

なかなか戻ってこなくてそわそわする。

なんとなく座る気にもなれなくて広くもない部屋を歩き回ったり窓の外を見たりして、30分くらい経った頃。

佐久間「ごめんね、お待たせ〜」

やっと戻ってきた佐久間先生の髪はぼさぼさ、袖が捲られた腕には引っ掻き傷、のようなものがあった。