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697日目8話 ページ9

神に選ばれし存在である私が、村の一人の女性と恋に落ちるなど、許されるはずがない。
だから私と彼女は村を出て、森の奥深くで二人で暮らすことにした。
村を出る際、御婆様にそのことを打ち明ければ、聡明な御婆様は少しばかりの食料や菜種を下さり、そして村にはもう来ないようにと言いつけられた。勿論、そう言われることは想定内。私の心は、これまでにないほど喜びであふれていた。

幾年月が経ち、元々知恵の働く私は、村に行くこともなく御婆様から頂いた菜種を育て、家畜を育てて生活を充実させていた。彼女はというと、子を身ごもっていた。
それは大変喜ばしいことではあったが、ただ一つだけ問題があった。
女性の出産について知識としては知っていれど、経験はない。更に彼女は時折、腹の中に電流のような痛みが走るとのことだった。子を授かれば痛みが伴うことは知っていた。最初は痛みを電気に例える比喩を用いているのかと思ったが、どうやら違うらしい。実際、1日彼女の腹に手を当てていれば、確かに微弱な電流が流れているのを感じた。

少しずつ心を開き始め、笑顔が増えた彼女とは相反して、私の心には一つの不安が募りつつあった。

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作者名:へたやん | 作成日時:2017年7月3日 19時

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