692日目3話 ページ4
「とは言っても、どうしたものか…。」
ー私は元来、平和主義に徹しているというのに…。
そう考えていると、突然、森の方から何かが跳ぶのが見えた。
そしてそれは、跳んだ勢いでそのまま化け物の巨体を蹴り倒す。
ドゴオォン
化け物の巨体は森の方へ倒れる。
「…。」
ー今の…先ほどの彼女。
私が森の方へ入ろうとすると、ピリピリとした殺気が私の足を止める。
「そっちへ行くな。」
背後から聞こえた声に振り返れば、先程森に落下していったはずの彼女が私から少し距離を取ったところに立っていた。彼女の肩からは血がぼたぼたと滴り、地面に赤いシミをつくっていた。
「…なぜですか?」
私がそう聞けば、彼女は鋭い目つきで私を睨んだまま、「貴様らが知る世界じゃない。」と言ってまた森の方へ跳んで行った。
「…。」
私は暫く彼女が消えて行った森を見ていたが、やがて自分の用を思い出し、長老の家へ向かった。
「御婆様。おられますか?」
暖簾のように入り口の布をどけて中に顔を出せば、御婆様は「どうかしたのかい終天。」とシワだらけの顔をこちらに向ける。
この星での地位は私の方が上なのだが、亀の甲より年の功。ということで、基本的に私は誰にでも丁寧口調で接するようにしている。
「あの黒髪の…日に焼けた、いつも一人でいる彼女について知りたくて来ました。」
私がそう言うと、御婆様は手元をいじりながら、「あぁ。雲鬢のことかい…。」としわくちゃの顔をより一層歪ませて笑う。
ー名は雲鬢というのか。
「あの子はちょっと癖のある子だけれど、とても優しくていい子だよ…。」
ー優しい…のか?
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作者名:へたやん | 作成日時:2017年7月3日 19時