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691日目2話 ページ3

仄かに香る自然の匂いを乗せた風が、彼女の美しい黒髪をなびかせる。
一度も陽など浴びたことのない陶器のような肌色をしている私とは違い、その体は傷だらけで肌は少し陽に焼けていた。
「そこでなにをしているんですか?」
背後から近づいてそう問えば、女は頬を赤らめて私から目をそらす……というのが今までだった。
だがこの女は違う。
鋭い視線で私のことを睨み付けると、ゆっくりと立ち上がり、
「私に近寄るな。気持ちが悪い。」
そう言って森の方へ跳んで行った。
ー気持ちが悪い…?


ー今日は地響きが多い。神の気分も悪いのだろうか。
彼女と私は、同じ星にいながら生きる世界はまるで違った。
「終点様。今日も美しいですね。」
「まるでお月様のように白くて綺麗ですわ。」
私の周りを取り囲む女子たちは皆、こぞって同じことを言って私の道の邪魔をする。
「あぁ、ありがとう。君たちも野原に咲く白百合のように美しいよ。その芳しき香りで、私を今日も癒してくださいね。」
女は至極単純な生物だ。甘い言葉を囁けば、まるで蜜を見つけた蜂のように群がってくる。
そう思っていたのに。
ー私は、彼女に近寄ることさえ許されなかった。
村の真ん中の御社が私の家。その側には長老の家がある。
私はそこに用があるのだが、取り巻きの周りの女たちのせいで中々長老の家へ向かうことができない。
ーどうしたものか。
私がそう思った時、突如、私たちを影が包み込む。
空を見上げれば、森の方に大きな化け物が立っていた。
「キャァァァァァァァァァ!!!!!!」
女たちのうるさい悲鳴があたりを包み込む。恐らく、この隙に長老の元へ行っても良いのだろうが、そうすれば私は逃げたということになってしまうのだろうか。
ーどうしたものか。
そう考えていると、化け物は片手を振り上げて、私めがけてその大きな拳を振り下ろしていた。
ー仕方がないか。
バチバチィッ
私や私の取り巻きの女達を包み込むように、半円状の電気の幕があたりを覆った。
それに触れた途端、化け物の腕は肩まで粉砕される。
「オォォア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛‼」
化け物の叫び声が辺りを包み込む。
「さあ皆さん、今の内です。早く自分の御家へおかえりなさい。」
そういえば女達はまるでアリのようにコソコソと自分の家へ逃げ帰る。
ーなんて都合のいい方々。

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作者名:へたやん | 作成日時:2017年7月3日 19時

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