705日目帰還 ページ17
Aと団長が出てってから数時間は経ってる。
もう十分夜が深い。いい加減俺達も動くべきか？
そう思っていると、まるで登場を見計らってたかのようにAと団長が叢から現れた。
それも全力疾走で。
「A！…っと団長!?」
それなりに怪我をして帰ってくるだろうとは思ったが、まさかこんなに血だらけになって帰ってくるとは。
「阿伏兎！船を出して！」
団長をおぶって走るAの背後からは、意思を持つように動く茨が迫ってきていた。
「おい！さっさと船を出せ！つーか扉を閉めろォ！」
俺はそう指示を出すとAに手を差し出し思い切り引っ張った。
というか二人分はだいぶキツい。
「んだよあいつらは！」
「わかんない。」
Aはだいぶ傷を負っているが、その瞳は獣そのもの。
手を離せば今すぐにでも飛び出しそうだ。
イヤに荒れてんなァ。
Aの背中から降ろされた神威はすぐに医務室へと運ばれた。
「おい、お前さんも「私はいい。」…そーかい。」
Aは額を伝う血を袖で拭うと、足速に自室へと戻っていった。
果たしてあの星で何が起こっていたのか。
それを俺が知る由もないが、知る気もない。
どっちにしろ、用が済んだからこいつらは帰ってきた。
このながったるい話を終わらせるために。
シャワーから出てくるお湯は、じわじわと傷口を締め付けた。
勿論こんな痛みどうってことない。この星を離れればすぐに治るのだから。
私の体を伝って排水口に流れていく血を見ながら、私は今までの事を思い出した。
全て、私の中では黒歴史。
レナが関わったことは全て。
今更あんな告白をされた所で、私は許す気もない。
ただ人が目の前で死んだだけ。
そう、今までのように。
それだけなのに、私の体は嫌に熱を持っている。
まるで怒っているような。
誰に？レナに？
勿論それはそう。
でもそれよりも、この物語の黒幕に。
私は怒っている。
私が幾つもの私の出来損ないを殺してきたのも。
私自身が私を殺してきたのも。
紫苑が、神威が、こうなったのも。
全ては黒幕のせい。
だったら…黒幕は誰？
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作者名：へたやん | 作成日時：2017年7月3日 19時
