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703日目使命と死命 ページ15

なにが起こったのかわからない。レナから感じられないいつもの殺気に、私の腕はゆく宛なくゆっくりとおりた。
どうしてこうなった?私の背中に手を回し、抱き着く形で私の体に寄りかかるレナの呼吸は浅く、時折何かを吐き出している音が響いた。
「ごめ、…んね……。」
表情が見えない。何を考えて、どうしてそんな言葉を口にしているのか。
私の中に芽生えていた殺意は、レナの予想だにしない行動によって完全に失われた。
私はどうすることも出来ず、レナの次の言動を待った。
「私ね……っ小さいころに、お医者さまから、子供が産めないって、言われてて、ね…。だから、あなたに会えて、ほんとに…本当に、うれしかったの。」
息も絶え絶えなレナの言葉は、放心状態の私の頭をぐるぐると這いずり回った。
それがなんだ。だから、紫苑を殺しても、私を傷つけても良かったのか。…こいつは憎むべき敵。今すぐ殺すべきだ。理性がそう訴えている。だが、体はいうことを聞かない。何故、ナゼ?
「…わた、しは、あの男から、あなたを、守ろうとしたのに……それが、…それができなかったっ!それどころか、わたしは…あな、たを傷つける、ばかりで…本当に、悔しかった、辛かった…!あなたには…つら、い思いをさせてしま、って…。あやまって、すむことじゃない、けど…本当に、ごめんね…。」
謝って済む話ではない。でも、血反吐を吐きながら語り続けるレナを見る限り、もう長くはないのだろうと。すぐ死ぬやつのために、私がわざわざ手を汚す必要もないだろうと。まるで誰かが脳内に語りかけてくるかのように。私の理性は冷静だった。
「でも……無事に、こんなに、大きくなってくれて、本当に良かった!
……ほんと、に…生まれてきてくれて………あ゛りがと゛う!!」
生まれて初めて言われた言葉だ。生まれてきたことを感謝されるなんて。しかもあろうとこか、私の宿敵とも言える相手に守られていたなんて。
私はどうすることも出来ずに、崩れ落ちるレナを見つめていた。ここでもしレナを抱き抱えてしまえば、今までの自分を否定することになるからだ。レナが絡めた指が地面に落ちた時、私の指には銀色のリングが付けられていた。
私はしばらくその場に座り込んでいたが、やがて糸が切れたように意識を手放した。

「せいぜい苦しんで逝け。」

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作者名:へたやん | 作成日時:2017年7月3日 19時

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