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第十六話 ページ18

微睡んでは目が冴えてを幾度となく繰り返した。
結論から言うと、眠れなかった。寝なくてはと思うほど、些細なことに神経を尖らせてしまい、目の下にはくっきりと隈が刻まれていることだろう。確実に太宰に莫迦にされる、と考えるともう怒りで脳まで冴えてしまった。

地平線はレモン色に染まり始め、カーテンの隙間から光が漏れる。
その光の筋を目で追っていくと、少女のはだけた浴衣の胸元に降り注いで、鎖骨に影を落としているところであった。
そのまま、掛け布団の上からでもありありと伝わってくる身体の線を無意識に眺めていく。

聞き慣れない電子音が、突如部屋中に響いて、心臓が跳び跳ねた。

目を閉じたまま、Aは布団の周りをまさぐって、白いフレームの携帯電話を引き抜き電話に出た。

「まだ…寝てます」
「おはようAちゃん。学校に必要なものはあらかた用意してあるから、探偵社の方に寄ってから登校してね」
「…ん」
「聞いてる?」
「んー」
「社長にかわろうか?」
「起きました」

やっと目を開け、むくりと身体も起こし 電話口に軽く受け答えをしてから端末を閉じるとすぐ、
「おはようございます」
こちらを向いた。

「おはよう」
と返しはしたけれど、目のやり場に困るので、咄嗟に身ぶり手振りで伝えてやると、あちらも焦ったように前を隠した。

男女という隔たり。年の差はあれど、やはり感じるものなのだな。
まあ今更そんな事を言っている場合ではないし、いずれ慣れていくものだ。

「あの、」
遠慮がちに声をかけられ振り返ると、制服を手に取って立っていた。
「ああ、すまんな」
布団を素早く畳むと部屋から慌ただしく出た。

「終わったら言ってくれ」
「はい」

襖の一枚向こう側から幽かな物音がする。
その物音一つ一つに考えを巡らせてしまう。
パサリと浴衣が落ちる音一つで、あらぬ妄想が目に浮かんできて…

悶々とした気を紛らわしたく、朝食の準備を進めた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 国木田独歩   
作品ジャンル:アニメ
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シリカゲル(プロフ) - ひなのまるさん» それもこれもひなさんがウチに文ストの魅力を教えてくれたからだよ。ありがとう! (2016年7月14日 1時) (レス) id: 028254152a (このIDを非表示/違反報告)
シリカゲル(プロフ) - イロハさん» ウチも君のことはリスペクトしてるぜ!ありがと!! (2016年7月14日 1時) (レス) id: 028254152a (このIDを非表示/違反報告)
ひなのまる - ランキングおめでとう御座います!!更新無理せず頑張ってね! (2016年7月13日 21時) (レス) id: 8462bd0719 (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - ランキングおめでとうです! 面白いし文の書き方うますぎて、ほんとにリスペクトですわ! 更新ファイトっ! (2016年7月13日 19時) (レス) id: 276ba08b49 (このIDを非表示/違反報告)
シリカゲル(プロフ) - 湯豆腐さん» ミステリアス!!マジですか!!ありがとうございますm(__)mこれ以上にない褒め言葉ですよ! (2016年7月13日 18時) (レス) id: 028254152a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シリカゲル x他2人 | 作成日時:2016年7月9日 3時

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