オタク、新たな出会い果たす。 ページ35
「さあ、ここが里の長、鉄地河原鉄珍の屋敷です。」
目の前には、私が過ごしていた家よりも大きい、木造の家が建っている。
勝手知ったる顔でその正面の玄関をくぐり抜け、少し奥へ歩いた先で、鉄穴森さんは止まった。
「鉄穴森です。入ります」
「どうぞ」
鉄穴森さんの返事に、襖の向こうから男の軽い声が聞こえる。
スッと音を立てず襖を開けた先には、畳の間が広がっており、その部屋の中心で老人が一人座っていた。
そして、その傍には、鞘に誰のものか判別もつかない血がこびりついた刀、氷川さんの日輪刀が置いてあった。
「っ、それは!!」
思わず声を荒げてしまい、礼儀無しに畳を踏みつけるが、咄嗟に我に帰った私は、慌てて口を手で覆う。
やばい、何やってんだ!!
「も、申し訳ありません....!」
冷や汗を流し、固まった表情で無礼を詫びる私に、鉄珍様は肩を揺らして笑った。
「全然ええよ、気にせんといてや」
私よりも小さいであろう手で、鉄珍様は己の前を指し、まあ座りや、と優しく声をかけてくれる。
私が、少し躊躇ってなかなか部屋に入れないでいると、鉄穴森さんが大丈夫と言わんばかりに背中を押した。
「ああ、鉄穴森はちょっち外してや」
「分かりました」
そう言って、鉄穴森さんは私を部屋に押し込んだ後、ゆっくりと襖を閉める。
そして、次いで廊下を歩く音が聞こえ、それがどんどん遠ざかって行った。
恐らく家の外で待機するのだろう。
「さ、座りや。」
「は、はい...」
鉄珍様の前に座る。
私と鉄珍様の間には、氷川さんの日輪刀。
なくしたのかと思った。
落ちる寸前まで、この刀を握っていたのは覚えていた。
だが、鉄穴森さんの家で起きたときにはもう手元にはなかった。
鉄穴森さんに、所在を尋ねてみようとも思ったが、命を助けて貰った上に、更に迷惑をかけてしまうのは忍びないと思い、何も言えなかったのだ。
恐らく川に流されたのだろうと思い、諦めていた。
それが、今、目の前にあるなんて....。
鉄珍様は、私との間に挟まっている日輪刀を掴み、鞘から刀身を抜きだして見せた。
刀身は錆び付いてしまい、蒼かったはずの刀身は、赤褐色に変色してしまっている。
あと一撃でも浴びてしまえば折れてしまいそうな有様だった。
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Stella.Ms.an - うう、 (2022年6月28日 19時) (レス) @page36 id: 44b715b917 (このIDを非表示/違反報告)
Stella.Ms.an - アッ、すみません取り乱してしまいましたいまのはわすれてくれますよねそうですよねニッコリ (2022年6月28日 19時) (レス) @page36 id: 44b715b917 (このIDを非表示/違反報告)
マイケル(プロフ) - はるさん» ありがとうございます!のんびりとですが更新していきますので、どうぞお付き合いください。景虎には醜く退場して貰うつもりなので、お楽しみに! (2020年3月21日 0時) (レス) id: ab4a955ce1 (このIDを非表示/違反報告)
マイケル(プロフ) - 雨傘さん» コメントありがとうございます!じょ、女装?!でも顔は普通に男前なので、似合ってしまいそうなのが更に腹立たしいところですね....!! (2020年3月21日 0時) (レス) id: ab4a955ce1 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 更新頑張って下さい!そして景虎さんに悪の撤退を! (2020年3月14日 16時) (レス) id: de479982fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シレア | 作成日時:2019年7月22日 22時