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何を言っているんだ、コイツは。
固まった俺を見ながら、京本は続ける。
「あ、ごめん。仕事か」
いや、違う。じゃなくて。
そういうことじゃなくて。
今日はもう仕事はない。
帰るな、と言われれば別に無理に帰らなくてもいい。
だけど、残ったところでどうなる。
俺と京本が二人でいたところで、どうなるというんだ。
「…別に、仕事はないけど」
「俺も。ならいいじゃん」
だから、何がいいんだよ。
「俺、北斗の家行ってみたい」
「………は？」
京本の言っている意味も意図も、まったくわからない。
突拍子もないその発言に、思わず鞄から手を離してしまった。
バタッと落ちる鞄を慌てて拾う。
視線は床に落としまま、その動揺がバレないように、俯きながら言葉を続ける。
「…昨日のことなら、もういいから」
なんて可愛げのない返事。
こういうところが、俺と京本の溝を深くする原因ということは、痛いほどにわかっているのに。
どうしても、上手い言葉が見つからない。
「ちげーよ、ばか」
そっと顔を上げれば、また、口を尖らせるアイツの顔。
だから、それやめろってば。
「本当は、昨日行こうと思った」
は、？
「正直迷ったけど、よっしゃ行こう！って決めた時にはもうお前走り出してて」
「だから、リトライ」
この男は、熱で頭がおかしくなったのだろうか。
嫌？と、首を傾げる京本に、「…嫌では、ない」となんとか搾り出した言葉を紡げば、よっしゃ、とまたガッツポーズをして見せた。
昨日、俺の発言に戸惑いを見せていたのは京本の方なのに。
今日は俺が圧倒されるばかりで、なんだか変な気分になった。
そもそも、昨日から何かがおかしい。
あれほど会話を交わさなかったコイツと、何故か、会話を成立させている。
しかも、二人きりの空間で。
一体どうなってるんだ。
支度を終えた京本と、肩を並べて楽屋を出る。
揺れる金髪と、少しだけ赤みを帯びた白い肌。
その存在を体の右側にひしひしと感じながら、そういえば、いつもコイツは俺の右側にいるな、なんて。
自然と歩くその立ち位置が、妙にしっくりくる。
そんなことばかり考える俺と、思考が読めず、あっけらかんとしたまま歩く京本。
二人で特に会話もしないまま、俺の家へと歩みを進めた。
なんなんだ、本当に。
今度は俺の方が、ズキズキと頭を痛ませる番なのかもしれない。
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白梅(プロフ) - なぺこさん» なぺこさんコメントありがとうございます！嬉しい言葉がたくさん、、！不定期更新ですが、ぜひこれからも応援よろしくお願いします！ (2019年6月3日 16時) (
レス) id: ff41a5aa52 (このIDを非表示/違反報告)
なぺこ(プロフ) - とても面白いです！文章から、その時の情景がすごく伝わってきて読みやすいです！！好きです！応援してます！！ (2019年6月2日 22時) (レス) id: 7d886639bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 | 作成日時：2019年5月15日 18時
