第89話 ただいま ページ42
「僕達、ちゃんと帰ってきたんだね。A姉さん」
「そうだよ。大我」
入国審査と自分の荷物を持って、税関を通過した午前9時。僕達は、羽田空港国際線の到着ロビーに足を踏み入れていた。
眼前には、千葉と埼玉の曾祖父母と祖父母を除く神崎家がお出迎えしていた。その中に、小学生の咲也香と
「大我ッ! 無事で、良かった…!」
「母さんッ! た、ただいま…」
「大我。よく帰ってきたな」
「中原さんのおかげだよ。父さん」
「大我兄ちゃん。おかえりなさい」
「ただいま。咲也香。結衣菜。寛太」
両親と妹の温もりと言葉が、ありがたく思えて、大切なものなんだと実感して、頭一つ分低い母の肩口で声を押し殺して泣いた。
あの男に、A姉さんと一緒に捕まって
「A。お帰りなさい」
「五体満足で何よりだ」
「ただいま戻りました。お父様。お母様」
A姉さんのほうに視線をやると、彼女からは泣く様子がみられず、逆に堂々とした態度で、
「中原さん。私共の娘と親族を取り戻して下さって、本当にありがとうございます」
「なんと礼を言えば…」
「皆さん、どうか頭を上げて下さい。僕ができる事を行動に移したまでですよ」
彼は、言葉だけのお礼を受け取って、『では、失礼します』と一言断って一礼した後、足早に北川を引き連れて、迎えに来ている私服姿の男性達の所に行ってしまった。一見、親し気な雰囲気だが、彼らの目は全く笑っていない。僕は、それだけで北川剛という男の末路を察し、顔から血の気が引くのを自覚した。
「さァ。あたし達も帰国を祝して宴といきますか。会場は何処にしましょう?」
僕の荷物を持ち、中原さんの殺伐とした場面に慣れている姉さんが、絶句する一族に告げ、父親達の肩を軽く数回叩いて雰囲気を変えた。
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エミリア1415(プロフ) - 薫染-ゆきせ-さん» 薫染ゆきせさん、コメントと応援。ご指摘ありがとうございます。意味を間違えて使っていました。教えて頂き、ありがとうございます。すぐに修正しますね。更新も頑張ります。 (2019年8月25日 21時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 此れからも更新頑張って下さい!2枠続けてのコメント失礼しました。あと 言葉運びが意図的なものだったらすみません! (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰ってます!89話の中の台詞についてなんですけど…内容的に「満身創痍」ではなく「五体満足」の方があっていると思いますよ。あの台詞だと「全身傷だらけで良かった。」みたいな意味になってしまうので…可也 上から目線ですね。すみません (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 銀桜さん、コメントありがとうございます。少しでも話を進められるように、更新頑張りますね。 (2019年8月22日 17時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
銀桜(プロフ) - あぁ、夢主ちゃんと大我くんが元に戻って良かったです。更新頑張ってください! (2019年8月22日 17時) (レス) id: 1194b2a018 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミリア | 作成日時:2019年6月30日 13時