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第7話 捕縛と二人の女 ページ9

「芥川先輩の一命を助けた事は感謝しますが、貴女は、ただ我々を混乱に陥れようとしているだけです」
「『予知』を『混乱』と捉えるのは、聞き捨てならない。こちらも、被害は最小限にしたいものでね」
「ポートマフィアに恩を売っても何もない!」

 元・幹部の北川さんから、容姿だけ、情報を貰っていた。

 写真に映っていたのは、眼前の女性の幼少期。
 朱色の髪に、灰色の瞳。
 欧州の出身かと思ったが、違うらしい。

「北川葛。20年前、行方不明になり、元・ポートマフィア幹部にして、炎を操る残忍な異能力者。普通なら、死亡届を出されて終わりになるはずだが、違うようだ。あのクソアマは、未だ生きている。…そうだろう?」

 我々しか知りえない情報を淀みなく述べる女性の無機質な瞳に、一種の恐怖を覚えた。

「…北川さんとは、如何いう関係ですか?」
「さァな。見事当てたら、貴女にとって良い情報を与えてやろう」

 抑揚のない声で、私に問う。
 彼女の頭上にある鎖が、じゃらりと音を立てた。鎖に繋がれても、全く動揺しない相手の策に陥る形で、私は答えを口にする。

「…親子、でしょうか?」

「……ご名答。認めたくはないがな」

 憎悪の感情が、初めて彼女の瞳から読み取れた。

「芥川は、重傷の身だが、必ず助かる。貴女のお陰でね」

「え…?」

 不意に微笑まれ、胸中にとぐろを巻く、芥川先輩を失う事の不安が、ほんの少しだけなくなる。首領から受けた医師としての報告と、部下達から命を狙われる事も、この時だけは忘れられた。

「今夜は、もう帰りなさい。疲れているでしょう? ゆっくり休んで、お休み」

 主導権が彼女にある事も気付かないまま、我に返ると、私は直帰していた。


「昨夜、どうだった? ご褒美は貰えた?」
「…秘密です」
「その顔は貰えたのか。良かったなー」
「何故判る!?」
「愛しい芥川先輩の事になると、感情を抑えきれないんだねェ」
「い、愛しいなど…! 私は、ただ上司として、尊敬しているだけであって…」

 待て。
 私は、何故彼女の話にまともに付き合っているんだ?
 ただ、尋問すれば良いだけなのに、この緊張感の無さと、話術の巧さに思わず引き込まれてしまう。

「尊敬? 心酔の間違いじゃねぇの?」
「〜っ。ええ。そうですよ! 心酔してます!」
「認めたついでに、その鍵で手錠を外せ。今日は、そのために地下に来たんでしょう?」

 もし、今の職ではなかったら、彼女と友達になっていただろうか。

第8話 首領とくの一→←第6話 予知夢



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 芥川龍之介 , NARUTO   
作品ジャンル:恋愛
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エミリア1415(プロフ) - にゃんこさん。コメントありがとうございます。魅力的に書けるように頑張ります。 (2021年1月15日 15時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 芥川大好き。龍チャン愛してる。 (2021年1月15日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 白狐さん» 白狐さん、コメントありがとうございます。更新できるように精進しますね (2018年12月16日 17時) (レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あー、最高。全てが好き。更新頑張ってください。僕の為にも((( (2018年12月13日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - ありがとうございます。頑張りますね。 (2017年4月9日 15時) (レス) id: 738ed6759e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミリア | 作成日時:2017年3月12日 22時

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