第6話 予知夢 ページ8
「嗚呼。胸糞悪いっ」
何故、自分に巫女の血が流れているのか。
普段は疑問に思った事はないが、2日続けて視るのは厭だ。しかも、それら全てが血生臭い出来事。
社員の誘拐。異能力者による三つ巴戦争。長の命を救う為、二つの組織が争う。
昨日、自分の予知夢に基づいて、ポートマフィアの長・森鴎外と、武装探偵社社長・福沢諭吉に、それぞれ直接電話した。
「榊A君。困るよ、キミ! 勝手な事しないで欲しいな」
「は?」
遠回しの表現をするなら、恰幅の良い体。直接的な表現なら、デブ。なんでこんなヤツが、あたしの上司なんだと人事部の人に問い詰めたいが、業務中はそれを押し殺す。
「武装探偵社ならまだしも、なんでポートマフィアの連絡先知ってて、電話かけたの!? こっちに奇襲かけられたらどうするのさ!?」
転属して1週間経ち、小言を言われ続け、ついに堪忍袋の緒が切れた。
「黙れ、万年中忍デブ野郎。我々は忍だ。敵が来ても迎え撃つのみ。まして、ポートマフィアとは一触即発なのは百も承知。だが、この横浜が、第三者の手によって火の海になるより良いだろ?」
「なっ…!」
「ポートマフィアに怖じ気づく小心者は、火影社に要らない。武器を手に取る限り、死と隣り合わせなのは、貴方も忍であれば重々理解しているはずですが?」
「……」
その折、昼休みを告げる音が鳴り、一礼して退室した。
「…また爆発か」
昼食は摂らず、独りで海を眺める中、不快な音がはっきり耳に届く。
貨物船の横に小型の船が着けているのが遠目に見えて、何かが水しぶきをあげて落ちた。柵を乗り越え、海上を走り、数秒で目的地に辿り着く。小型の船を操縦しているのは、国木田さんだった。
「貴女の予知に感謝する」
「お役に立てて良かった」
「では、失礼」
互いに別れて、十分に酸素を肺に送り、足裏にチャクラを練るのをやめ、服が濡れるのも構わず、海に潜る。冷たく、暗く、深い海中で、沈んでいく夫を探す。
黒外套が、指先に触れた。
それを掴んで抱き寄せ、片手を上下させ、脚をばたつかせて水面を目指す。
「…ぶあっ!」
貨物船が、こちらに覆い被さるようにゆっくり傾き始めていたが、焦る事はない。空いている左手の平にチャクラを練り、海面を地に見立て、腕力と全身のバネで海に上がる。気絶している龍を背負い直し、濡れた背広のまま、街を闊歩し、あるビルに着いた。
「お届け物です」
先日応戦した金髪美女が驚いていた。
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エミリア1415(プロフ) - にゃんこさん。コメントありがとうございます。魅力的に書けるように頑張ります。 (2021年1月15日 15時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 芥川大好き。龍チャン愛してる。 (2021年1月15日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 白狐さん» 白狐さん、コメントありがとうございます。更新できるように精進しますね (2018年12月16日 17時) (レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あー、最高。全てが好き。更新頑張ってください。僕の為にも((( (2018年12月13日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - ありがとうございます。頑張りますね。 (2017年4月9日 15時) (レス) id: 738ed6759e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年3月12日 22時