第１話 パルス歴304年 ページ2
「ここは、どこだ…」
俺は叔父上の用事について来て、待ち時間に王宮の中を散策していた。
あまりに広くて迷子になっていると、先ほど通り過ぎた部屋の扉が開く。周りを見渡す際に腰まで届く黒髪がふわりと風に揺れ、空のように澄みきった青い瞳と視線がぶつかった。上品な装飾が施されている服をまとっていることから、この王宮に住む者だろう。
「どうしたの？」
少女の頭からつま先まで観察していたため、答えるのが一拍遅れた。
「迷子になった」
ごまかすのは嫌いだから、正直に答えると、彼女は『そう』とだけ言って俺の手を引き、どこに行きたいのか尋ねた。
「会議室の前だ」
「なんで？ マルズバーンでもないのに」
「叔父上が、エーラーンなのだ」
大将軍の名を聞いて、少女は笑顔になった。
「ヴァフリーズのこと？」
「なぜ知っている？」
「彼に剣術を習っているの。あたしは、A。あなたは？」
「ダリューンだ」
剣術を教えている少女の話を、以前、叔父上から聞いたことがある。会議室に着くまで、お互い歩きながら将来の夢を話した。俺は、万騎長になること。彼女は、女だから戦には出られないが、剣術や馬術。体術を極めたいらしい。
夕刻、叔父上に王宮でAに会ったことを話すと、食事をする手を止めてこう言った。
「彼女は、パルスの皇女様だぞ」
「っ!?」
つまり、俺は皇女様に敬語を使わずに無礼な口をきいてしまった訳だ。
翌朝、城外へ行き、有り金をはたいて、質素な作りのエメラルドの首飾りを買い、彼女の所へ向かう。広間で金属音が響き、叔父上から剣術を教えられている所だった。それが終わり、俺は剣を鞘に納めた後の彼女を前に片膝をつき、昨日の詫びを述べる。
「姫。先日の無礼、申し訳ございません」
「気にしないで。あなたに会えて嬉しかったもの」
「光栄であります。このダリューン、必ずや万騎長となり、姫を守ってみせまする」
「嬉しい。楽しみにしています」
一月後、首飾りを渡す決心をして、すぐに広間へ向かった。
しばらく待っていると、侍女を連れてA姫が通りかかる。彼女は、俺を見るなり、侍女を下がらせて、青空の下に白い肌をさらした。
「姫。今日は贈り物をしたく参りました」
それを受け取り、俺に対して、可憐な花のように微笑まれた。
「ありがとう、ダリューン。一生大切にする」
「私めには過ぎた言葉でございます」
この夜、オスロエス王と皇太子、皇女が亡くなられた。
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エミリア1415(プロフ) - お久しぶりです、イヴィさん。季節は冬で、年末のマンハッタン。ベタだな…と自分でツッコミつつ、次の話を組み立てている最中です。 (2016年9月30日 10時) (
レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - キャー\(//∇//)\2人で旅行とは…！これはますます見逃せません！次話での展開楽しみです！ (2016年9月29日 23時) (レス) id: 5980d81e59 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - コメントありがとうございます。作者も、ここから話をどう組み立てるのか分かりませんが、最終的にはハッピーエンドにしたいと思います。 (2016年7月5日 22時) (レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - まさかの犯人ダリューン…これは予想外ですΣ（ﾟдﾟlll）驚きのMAXですどうなっちゃうの次話？！ (2016年7月5日 19時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - ありがとうございます\(//∇//)\凄く楽しみにしてたのでとても嬉しいです！何やら記憶も戻りつつあるようですし次回が今から待ち遠しいです！ (2016年6月22日 23時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミリア | 作成日時：2015年7月24日 22時
