まさかあたしがモテるなんて！ (ページ17)

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過去のおはなしページ17

まだ、スタイリストとして雑用ばかりしていた頃の話。
先輩の選んだ衣装をひたすら演者さん、アイドルの方々に運んで色んなところを走り回っていたあの頃。

｢Aさーん！こっちに衣装持ってきて！｣
『はい！ただいま！』
沢山の衣装を、手にいっぱい抱えてあたしはこの衣装で皆さんが輝くんだ！そう思って、毎日宝物を抱く気持ちで衣装を抱えてその衣装を着て輝く人たちを見ていた。

そんな中、リハーサル中の気になる6人を見つけてしまった。すごくイラついたような、諦めたような哀しい表情の6人組。歌とダンスも凄いのに。輝いてない。
(どうしてあの人達はあんな表情しているの？)その人たちは、音楽がなり止むと足早にその場を去っていった。

｢Aさんこの衣装を六番室の楽屋まで持って行って。｣
『あ、は、はい。』
衣装を受け取って、駆け足でスタジオから出て楽屋スペースに向かった。

(六番室…六番室ろく…)

｢くっっそ！｣
ガタンっ
四番室を通り過ぎよう、そんな時その楽屋から男性の苛立つような何かを倒した大きな音が聞こえた。あたしは足を止めて、少し空いてる扉を覗き見てしまった。

｢樹！物に当たんなよ！｣
｢うるせぇ、高地はお前らは悔しくねぇのかよ！｣
樹と呼ばれた男性は身につけていた衣装を乱暴に脱ぎ散らかす。
｢似たような衣装、使い回しの衣装ばっかり！うんざりだと思ってるの俺だけじゃねぇだろ！｣
その彼の言葉に残りの5人は、押し黙ってしまっていた。

ハーフっぽい背の高い男性は今にも泣き出しそうで悲しそう。黒髪のクールな感じの人も、すごく落ち着いているように見えてオーラが刺々しい。その場の皆さんが刺々しい雰囲気だ。

｢俺らのデビュー、決まらないからって勝手に俺らを押しやろうとしてんだよ！使い回しの衣装で充分だって馬鹿にしてんだよ！｣

くそぉっ！そんな彼の言葉を聞いて、いても立っても居られなくなった。

(こんなのダメだ。彼らは演者。あたしはそれを輝かせるスタイリストだ！)

『あのっ!!!!!』
ガチャりと扉を開けて、いきなり入り込んできたあたしに皆さん驚いた顔をしてあたしに注目した。

｢…誰だよあんた。｣
『あ、新人のスタイリストです。通りすがりに今の話を聞いてしまって…申し訳ございませんっ！でも、聞いてたら、いても立ってもいられないというか…。』
樹という人は苛立ちを隠しもせず睨みつけてきた。