その男、情報屋。 (ページ4)

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case1-3 ページ4

被害者は四ノ宮英夫生まれながらにして視覚障害があったが、17歳の時に受けた手術により奇跡的に快復。それから絵画をかきはじめた。光をモチーフにする抽象画家として【煌めきの画家】との異名を持つ。

同じく画家だった四ノ宮由希子とは英夫の一目惚れで結婚。由希子は家庭に入って夫を支えるのに専念した。美術界では有名なおしどり夫婦で、由希子は英夫にとってのミューズ。

息子が1人いる。四ノ宮竜也22歳。画家の卵の美大生。まさに絵に書いたような芸術一家。

事件発覚は今朝9時ころ。
第一発見者である息子、竜也と画商寺本が何度呼びかけても出てこない被害者を不審に思い、扉を開けようとするも開かない。息子がドアの間に定規を滑らせ、竜也と寺本と四ノ宮由希子と扉を開けるとなくなった被害者がいた。

『絵に書いたような芸術一家…おしどり夫婦…ミューズ、ねぇ』

調べた情報から被害者、依頼人、被害者関係者を読み解く。それが俺の仕事。

「A、何か引っかかるの？」
『まぁ、色々な。』
氷雨にそう答えると横からタクシーを降りてきた倒理は目の前の豪邸を見て目をギラつかせる。

「この家いくらするんだよ。」
「四ノ宮英夫の絵は海外のオークションで高値がついたことから、一気に売れ始めたみたいだよ」
ボソボソと喋る氷雨をしりめに倒理は興奮した声で
「報酬2桁はかたいな！」
と喜んでいる。
四ノ宮由希子が振り向くのをみて氷雨がまた咎める。

2人に続き、家の中へ入る。
家の中も外観を裏切らない内装でとても豪華だ。
土足で入っていく倒理をスリッパ片手に慌てて入る氷雨。
その後に続く。

画商の寺本に絡まれる2人。
氷雨が助手に間違えられるのももう何度も見てきた。

(このリビングから被害者、被害者関係者たちの情報は…)

リビングを歩き回れば、2人はいつもの通りなにやら言い合っている。そんなのは構わない。

ふと、飾られている家族写真に俺は目を向ける。
小学校～大学までを撮った家族写真だろう。
歳を重ねるにつれて、四ノ宮由希子と竜也の顔は暗くなっている。

(絵に書いたような芸術一家…果たして本当にそうなのだろうか。四ノ宮由希子にも違和感を感じる。息子の竜也にも。)

「2人とも担当外。五月七日、まだこいつらといたのか。」
2人の言い合いを止めたのは聞きなれた奴の声だった。