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戸惑う俺たちを置いて、結納やら婚約やら式の準備やらがトントン拍子に進んでいき、その式もつい先日終わった。
これから自由な恋愛ができたはずの彼女を、どちらも不可抗力だったとは言え縛り付けてしまうことになる。
それでも、と諦めを抱きつつ真実を告げると、彼女は瞳から涙を幾つも零して｢覚えている筈なのに、思い出せない｣と悔しそうにしゃくり上げながら俺に抱きついた。
＿そして、今。
ああああ流石に有名な奴やったしすぐ分かるんやろうなぁ、なんで言ったんや俺のアホ。あんなん｢君がちっさい頃から好きやったで｣って言ってるんと同じやん、ロリコンと思われたら死ぬわ。確実に死ねる。
｢...の、あの、トントンさん...っ！｣
｢うぉっ！？はい、何でしょう！｣
式の前から二人で暮らしている家で、いつの間にか目の前に立っていた彼女に驚いてソファーに座っていた身体が跳ねた。Aちゃんは手を背中側に回し、頬を染めて俯きつつ視線を泳がせている。
｢こ、これって...トントンさんが昔私にくれたものですよね？｣
｢あぁ、せやね。これは俺があげた奴やけど...どしたん？｣
俺の前に差し出されたのは、昔彼女にプレゼントした髪飾り。小さい女の子が好むもんなんか分からんかった俺が一生懸命選んだ贈り物だった。
｢トントンさん、その時私に言った言葉...覚えてますか？｣
ちょっと待て、それって、
『その髪飾りが似合うくらい綺麗な髪が伸びたら、俺がAちゃんを嫁に貰ったる』
二人同時に、過去の俺と一言一句違わない言葉を発した。
呆然と彼女を見上げる俺に、Aちゃんは涙を煌めかせながらふわりと微笑む。
｢...お待たせ、トンお兄ちゃん｣
｢...おん、おかえり｣
くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ 君ならずしてたれか上ぐべき
(昔貴方と長さを比べた私の髪も、肩を過ぎるまで伸びました。どうして貴方以外の誰のためにこの髪を結い上げましょうか。)
しのぶれど色に出にけり我が恋は/sh→←君ならずしてたれか上ぐべき
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作者名：鳳仙夏 | 作成日時：2018年1月24日 16時
